ラーンがいつものように剣を片手に遺跡の入り口に立ち尽くしていると、イシェが眉間にしわを寄せながら後からついてきた。
「またあの廃墟か？ 同じような遺跡を何十回も探索しても、大したものは見つからないだろう。」
「そう言わずに。いつか必ず大穴を見つけるさ！ 今日はきっと何かある気がするんだ！」
ラーンの明るい声にイシェはため息をついた。彼の楽観性にはいつも呆れていたが、彼と一緒にいるとどこか安心する部分もあった。
テルヘルは二人を見下ろしながら、「今日の目標はあの奥にある部屋だ。そこには古代ヴォルダンの技術資料が眠っていると噂されている。」と冷静に説明した。
「ヴォルダンか…。」イシェは呟いた。テルヘルの目的を聞いたときから、この遺跡探索には何か別の理由があると感じていた。彼女はいつもヴォルダンに関する情報を集めているように見えた。
遺跡内部は湿気を帯びた暗闇で、足元には崩れかけた石畳が続いていた。ラーンが先頭を切って進むと、イシェは後ろから警戒を怠らなかった。テルヘルは二人よりも少し後方で、地図を広げて進路を確認していた。
「ここだ。」
テルヘルが言った場所にたどり着くと、そこは広くて天井の高い部屋だった。壁には古代の文字が刻まれており、中央には石でできた祭壇があった。祭壇の上には、金属製の箱が置かれていた。
「これがヴォルダンの技術資料か…。」イシェは目を丸くした。
ラーンはすぐに箱を開けようと手を伸ばしたが、テルヘルに止められた。
「待て。この箱を開ける前に、何か仕掛けがあるかもしれない。」
テルヘルは慎重に箱を調べ始めた。
その時、突然床が揺れ始めた。壁から石が崩れ落ちてきて、ラーンの足元を直撃した。イシェは慌ててラーンを引っ張ったが、遅かった。ラーンの足は石の下敷きになってしまった。
「ラーン！」
イシェは叫びながら、石を持ち上げようとした。しかし、石は重くて動かなかった。
「大丈夫か？ ラーン！」
テルヘルも駆け寄ってきたが、状況は好転する気配がない。その時、イシェは何か閃いたように言った。
「あの箱だ！ 箱の中に何かあるかもしれない。」
テルヘルがすぐに箱を開けようとすると、中には小さな金属製の球が入っていた。球の表面には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているようだった。
「これは…？」
テルヘルは球を手に取り、慎重に観察した。その時、球から光が放たれ、部屋全体を照らした。
光が消えると、イシェは驚いて声を上げた。ラーンの足元には、石の下敷きになっていたはずの彼が、ゆっくりと立ち上がっていたのだ。
「どうしたんだ？ 何があった？」
ラーンの顔には困惑の色が浮かんでいた。彼は何も覚えていない様子だった。
イシェとテルヘルは互いに目を合わせた。あの球は何だったのか？ そして、ラーンを救ったのは一体何なのか？ 彼らはまだ知らない真実へと足を踏み入れることになった。