「おいラーン、今日は何処の遺跡だ? またあのボロ遺跡じゃねえだろうな」イシェが不機嫌そうに言った。ラーンの肩越しに、テルヘルが薄暗い酒場で目を細めていた。
「ほらイシェ、そんな顔をするな。今日の遺跡は、あの伝説の『黄金の塔』だぞ!」ラーンは得意げに胸を張った。イシェは眉間にしわを寄せた。「黄金の塔? 聞いたこともないぞ。また嘘つきか?」
「嘘じゃない! 本当だ! だって、ほら」ラーンは慌ててテーブルの上に広げた地図を指差した。イシェは地図を睨んだ。「こんなぼろい地図で分かるわけがないだろう…」と呟いたが、ラーンの熱意に押され、結局渋々同意した。
テルヘルは静かに酒を飲みながら、二人のやり取りを見つめていた。彼女はラーンとイシェの無謀さに呆れつつも、彼らの持つ可能性に期待を抱いていた。二人が遺跡で発見した遺物があれば、ヴォルダンへの復讐に一歩近づけるかもしれない。
遺跡へと続く道は険しく、深い森を抜けていくうちに日が暮れてしまった。「やっぱり嘘つきだな…」イシェがため息をついた。ラーンの顔も曇っていた。「まさか…本当なのか?」彼は不安げに呟いた。
その時、テルヘルが突然立ち止まった。「聞こえたか? 」彼女は鋭い耳を立てて周囲を警戒した。ラーンとイシェは静かに耳を澄ました。遠くからかすかな音が聞こえてきた。それは金属音だった。
「誰かいるぞ…」イシェは緊張した顔で言った。ラーンの手は剣に自然と伸びた。三人はゆっくりと進むと、森の奥深くで朽ちかけた石造りの建物を見つけた。その入り口には、奇妙な紋章が刻まれていた。
「黄金の塔…」テルヘルは呟いた。「ここが伝説の黄金の塔か… 」ラーンは興奮を抑えきれない様子だった。イシェは不安げに「本当にここに財宝があるのか?」と尋ねた。
テルヘルは少しだけ微笑んだ。「財宝は確かにあるでしょう。しかし、それ以上に重要なものが見つかるかもしれません。ヴォルダンが隠している真実… 」
三人は互いに目を合わせ、ゆっくりと黄金の塔へと足を踏み入れた。彼らの前に広がるのは、かつて栄華を極めた王国の遺跡だった。そこには、歴史の謎と危険が待ち受けていた。