「おいラーン、あの石碑、よく見てみろよ」イシェが眉間に皺を寄せながら言った。ラーンの視線は、埃まみれの石碑から離れなかった。「なんだ、またお説教か?」とラーンは不機嫌に言ったが、イシェの言葉にはいつも耳を傾けようとしていた。イシェは慎重で、ラーンの計画性のない行動をいつも危惧していたからだ。
「この刻印、見たことあるような...」イシェは石碑に刻まれた複雑な模様を指差した。「以前、古い文献で見たことがあるような気がするんだけど...」彼女は記憶を辿りながら言った。「確か、これは古代の魔術に関するものだったはず...」
ラーンの顔色が変わった。「魔術か?面白いかもな!」彼は目を輝かせた。イシェはため息をつき、「また興味の対象が変わったわね。でも、魔術なんて危険すぎるんじゃないかしら?」と心配そうに言った。
「大丈夫だ、イシェ。俺にはラーンがいるじゃないか」とラーンは自信満々に笑った。だが、イシェは彼の言葉に安堵したわけではなかった。彼女は、この遺跡が単なる冒険の場ではなく、何か大きな秘密を秘めていることを感じていた。そして、その秘密が彼ら自身を危険な場所へと導くのではないかと恐れていた。
テルヘルは石碑を見つめ、鋭い視線で刻印を分析していた。「古代の魔術...興味深い」と呟いた。彼女はラーンの無邪気さに呆れながらも、彼の行動に何か意図があるのではないか、と疑っていた。
「この遺跡には何か隠されているものがある。そして、それが我々の目的達成の鍵となる可能性がある」テルヘルは自分の胸の内を明かした。「仔細に調べろ、二人がかりで」 ラーンは興奮気味に頷き、イシェは渋い顔をした。三人は互いに異なる目的を抱えて遺跡を探索していたが、その先に何が待ち受けているのか、誰も知る由もなかった。