ビレーの tavern の喧騒を背に、ラーンはイシェとテルヘルの顔色を伺った。テーブルの上には、新たな遺跡調査の依頼書が置かれている。今回はヴォルダンとの国境付近にあるという、危険な遺跡だった。
「報酬はいいぞ」とラーンが言った。「だがな、イシェ、あの辺りはヴォルダンの兵士がうろついてるって話だぞ。テルヘル、本当に大丈夫か?」
イシェは依頼書を精査しながら、眉間に皺を寄せた。「危険なのは分かっている。しかし、報酬額も高いし、この遺跡には貴重な情報が眠っている可能性もある。リスクに見合うだけの価値がある」
テルヘルは静かに口を開いた。「ヴォルダンとの国境付近の遺跡か…。」彼女の瞳に燃える憎しみが、一瞬だけ垣間見えた。「あの地には、私の復讐を助けるものがあるかもしれない。」
ラーンの胸がざわつく。テルヘルはいつも、何か秘密を抱えているように思えてならない。ヴォルダンとの間に何があったのか、彼は知らなかったが、彼女の言葉から感じる強い憎しみが、彼自身も巻き込んでいくような気がした。
「よし、行くぞ!」ラーンは立ち上がった。彼の瞳には、冒険への興奮と同時に、どこか切ない影が浮かんでいた。イシェの心配そうな視線を感じながらも、彼は一歩を踏み出した。
遺跡へ向かう道中、ラーンの心は様々な感情に揺さぶられた。巨大なヴォルダンの軍勢を前に、かつて故郷を失った人々の姿が頭に浮かんだ。そしてテルヘルの復讐の炎、その背後にある深い悲しみを感じた。
「俺たちは一体何のために戦うんだろう…」
ラーンは呟いた。彼の心には、漠然とした不安と、どこか懐かしい希望が交錯していた。