「よし、準備はいいか?」
ラーンが豪快に笑う。イシェはいつものように眉間にしわを寄せながら、装備品を確認した。
「いつも通り、計画もなしに飛び込むつもりか?」
「計画なんていらないだろ!遺跡探検は冒険だ!ワクワクするじゃないか!」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。だが、ラーンの瞳の輝きは本物だった。
テルヘルは二人を見下ろすように言った。「今回は特に慎重に。この遺跡にはヴォルダンが関与している可能性が高い。」
彼女の冷たい視線は、まるで氷のように鋭い。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。テルヘルの目的は復讐だ。ヴォルダンとの因縁は深く、彼女を燃やす炎のように強い憎悪を抱いていることを、彼らは知っていた。
遺跡の入り口に近づくにつれ、空気が重くなった。石畳が敷き詰められた通路は薄暗く、埃っぽい風が吹き抜ける。ラーンは剣を抜いて先頭を歩いた。イシェは彼の後ろを少し遅れて歩き、テルヘルは二人から少し離れた位置で警戒を怠らなかった。
「ここだ!」
ラーンの声にイシェが駆け寄った。壁に埋め込まれた石碑には、複雑な文様が刻まれていた。「これは…ヴォルダン王家の紋章だ」イシェの視線は硬くなった。
その時、地響きとともに通路の一部が崩れ落ちた。ラーンは素早くイシェを引っ張り出したが、テルヘルは岩に押し潰されそうになった。
「やれやれ…」
影の中から声が聞こえた。巨大な男が現れた。彼の左目に刻まれた傷跡は、まるで獣の爪痕のようだった。
「ヴォルダン軍か…」
テルヘルの声が震えていた。男はゆっくりと剣を抜いた。その瞬間、ラーンの目の奥に、燃えるような怒りが宿った。
「お前が…あの日…」
ラーンは震える声で言った。男の顔を見た瞬間、彼は思い出した。あの日、村を襲い、家族を奪った男の顔だったのだ。
「仇敵か?」
男は嘲笑した。「お前たちの運命はここで終わる。」
剣が交差する音だけが響き渡る。ラーンとイシェは男に立ち向かう。テルヘルは傷を負いながらも立ち上がり、復讐の炎を燃やして戦った。三人は息も絶え絶えになりながら戦い続ける。
彼らの背後に、崩れゆく遺跡がゆっくりと沈んでいく。