ラーンが遺跡の入り口で、いつものように大げさに息を吸い込み、胸を張った。
「よし!今回は絶対に何か見つかるぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの背後から彼に近寄ってきた。
「またそんなこと言ってる…」
彼女は小さな声で呟いた。ラーンが言う「何か」とはいつも漠然としたものであり、実際にはほとんどの場合、錆び付いた金属片や割れた壺など、価値のないものがほとんどだった。それでもラーンは毎回のように興奮し、イシェは彼の様子を眺めるうちに、次第に諦め始めていた。
「今回は違うぞ、イシェ!俺の直感が言ってるんだ!」
ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の熱意に押されて小さく頷くしかできなかった。その時、背後から低い声が響いた。
「そうでしょうか? ラーンさん。あなたの直感にはあまり期待していません。」
それはテルヘルだった。彼女は黒曜石のように黒い目を鋭く見据えながら、ラーンの言葉に冷淡な笑みを浮かべていた。
「今回はあなたたちが手に入れた遺物について、少し話を伺いたいと思っております。」
テルヘルの声は冷静で、しかしどこか鋭い刃物のような印象を与えた。イシェは本能的に背筋がぞっとするような感覚を覚えた。ラーンは全く気にしていなかったようで、いつものように明るく答えた。
「ああ、もちろんだ!でもその前に、今日の成果を見てくれよ!」
ラーンの言葉に導かれるように、彼らは遺跡の中へ足を踏み入れた。薄暗い通路を進んでいくと、やがて広間に出た。そこには、巨大な石棺が置かれていた。
「うわっ…これは…」
ラーンの声が思わず漏れた。石棺の上には複雑な模様が刻まれており、その美しさに息をのむほどだった。イシェもラーンと同じように目を丸くして石棺を眺めていた。
「これは一体…?」
イシェは呟いた。テルヘルは石棺をじっと見つめ、唇をわずかに動かした。
「これは…」
彼女の目は光り輝いていた。
「我々が探していたものなのかもしれません。」