「おい、イシェ、どうだ？今日はいい感じの予感がするぞ！」
ラーンが陽気にそう言うと、イシェはため息をついた。
「また大穴の話か。ラーン、遺跡探索はそんな甘いもんじゃないって何度も言ってるだろう」
イシェは慎重に地図を広げ、周辺の地形を確認した。彼らの拠点であるビレーから北へ、険しい山道を越えた先に眠る遺跡は、過去の文明の痕跡を秘めた危険な場所だった。
「分かってるんだって！でもさ、いつか必ず大穴を見つける日が来るはずだ。俺たちにはその直感があるだろ！」
ラーンの熱意にイシェは苦笑した。ラーンは楽観的で行動的な性格だが、彼の無邪気さにイシェはいつも心を動かされた。
「まあ、今回はテルヘルが依頼してきた遺跡だからな。大金持ちの貴族のお宝探しも面白いかもしれない」
テルヘルはヴォルダンとの復讐を誓う謎の女性だった。鋭い眼光と冷徹な性格で、ラーンとイシェには恐怖心を与えたこともあった。だが、彼女の目的は謎に包まれ、彼らを雇う理由も曖昧だった。
遺跡への道は険しく、獣の咆哮がこだまする深い森を抜けなければならなかった。日が暮れる前に遺跡に到着できたのは幸運だった。
「ここだな」
テルヘルは地図を広げ、遺跡の出入り口を示した。
「ここはかつて王家のための霊廟だったらしい。貴重な遺物が見つかる可能性が高い…だが、同時に危険な罠も仕掛けられているはずだ」
イシェは緊張を隠せない。ラーンのように無鉄砲に進むわけにはいかない。
テルヘルは鋭い視線で周囲を見回し、
「我々は協力して進もう。互いに助け合うことでリスクを最小限に抑えることができるだろう」
彼女の言葉にラーンとイシェは頷いた。
遺跡の入り口は暗く湿っていた。石畳の上には苔が生え、古びた装飾品が散らばっていた。
「気をつけろ、罠かもしれない」
イシェは足取りを慎重にし、ラーンとテルヘルに警告した。彼らは互いに背後を警戒しながら遺跡内部へと進んでいった。
長い廊下の先に広がる巨大なホール。壁には神秘的な絵画が描かれ、天井からは豪華なシャンデリアが吊り下がっていた。中央には祭壇があり、その上には黄金の棺が置かれていた。
「これが王家の霊廟か…」
ラーンの声が響き渡った。
その時、床から突如として鋭い棘が生えてきた。ラーンは素早く身をかわしたものの、イシェは足を刺されて転倒した。
「イシェ！」
ラーンが駆け寄ろうとした時、テルヘルが彼を制止した。
「危険だ！罠だ！」
彼女の言葉通り、床から次々と棘が生えてきて、イシェを囲んでいく。
「くっ…俺のせいだ…」
イシェは動けずに苦しんでいた。ラーンは焦燥感に駆られたが、テルヘルは冷静さを保っていた。
「落ち着いて、ラーン。イシェを助けるには、この罠を解除する必要がある」
彼女は地図を広げ、遺跡の構造を分析した。そして、壁の一面に描かれた絵画に注目した。
「あの絵画…もしかしたらヒントになっているかもしれない」
テルヘルは絵画をよく観察し、ある特定の場所に手を当てた。すると、壁の一部がスライドして、通路が現れた。
「ここを通ればイシェを助けられる！急いで！」
テルヘルとラーンは協力してイシェを救い出し、通路を通って安全な場所へ逃げ込んだ。
イシェは怪我こそ軽かったものの、恐怖心で体が震えていた。
「ありがとう…テルヘル…」
彼は感謝の言葉をささやいた。テルヘルは淡々と頷き、
「我々は互いに助け合うことで生き残ることができる。それが仁義だ」
そう言った。彼女の言葉にラーンとイシェは深く納得した。
彼らは遺跡探索を続ける中で、危険と隣り合わせの人生を送る中で、互いの絆を深めていくことになる。