ラーンの豪快な笑い声がビレーの狭い路地裏にこだました。イシェは眉間に皺を寄せて、彼の背後から「もう少し静かにしろよ。騒ぎ立てると近所迷惑だぞ」と呟いた。ラーンは「ははっ、気にすんなって!今日はいい日になる予感がするんだ!」とばかりに胸を張った。
その日はテルヘルからの依頼だった。古い遺跡の調査だ。報酬は以前より少し増額されていた。テルヘルはいつも冷酷な表情で、目的のためなら手段を選ばないタイプだが、なぜか今回は少しだけ穏やかな様子に見えた。
遺跡は山奥にひっそりと佇んでいた。朽ちかけた石造りの門が崩れ落ち、苔むした壁からは野草が生い茂っていた。ラーンは剣を携え、イシェの後ろを歩きながら「よし、今日も大穴だ!」と叫んだ。イシェはため息をつきながら「大穴なんてどこにもないよ。もっと現実的になろうよ」と呟いた。
遺跡内部は薄暗い。崩れた柱や瓦礫が散らばり、不気味な静けさに包まれていた。ラーンはワクワクした様子で、イシェを先導するように進んでいった。テルヘルは後ろからゆっくりと歩いていた。彼女の目は鋭く、周囲を警戒しているように見えた。
奥深くまで進むと、広間の入り口にたどり着いた。そこには巨大な石棺が置かれていた。ラーンとイシェが興奮して近づくと、突然石棺の上から砂埃が舞い上がって、二人の視界を遮った。
次の瞬間、激しい衝撃が二人を襲った。ラーンの剣が地面に落ち、イシェは壁に激突してよろめいた。テルヘルが彼らの前に立ちはだかり、鋭い声で叫んだ。「不意打ちか!誰だ!」
影の中から一人の男が現れた。彼は黒いマントをまといており、顔は闇に隠されていた。男は「お前たちの目的は何か?」と低い声で尋ねた。テルヘルは「我々は遺跡調査隊だ。ここは公的な許可を得て探索している」と答えた。
男は嘲笑した。「公的許可?そんなものが必要な場所ではない。ここはすでに誰かの手に渡っている」彼はゆっくりと手を広げ、小さな光が彼の掌に浮かび上がった。「この力は、お前たちが望むような大穴をもたらす力だ」
ラーンの表情が曇り始めた。イシェは恐怖で震えていた。テルヘルは男の言葉の意味を理解し、冷静さを保とうとした。しかし、彼女の心には冷たい不安が広がっていた。
男はゆっくりと歩み寄り、「仁徳をもってこの力を制御できる者だけが真の勝利を手にするだろう」と告げると、光を放ちながら姿を消した。遺跡の中に広がっていた静けさは、まるで彼の言葉によって打ち砕かれたかのように、不気味に響き渡った。