「準備はいいか?」ラーンの声は興奮気味だった。イシェは彼の手荒な扱いにため息をつきながら、装備の最終確認を行った。テルヘルはいつものように冷静沈着に地図を広げ、遺跡の位置を確認していた。
「今回はあの洞窟だ。噂では奥深くで、かつて王族が所有した黄金の杯が見つかったらしい」ラーンは目を輝かせた。「あの杯を手に入れたら、ビレーで一番大きな酒場を買えるぞ!」
イシェは眉をひそめた。「また夢物語か?そんな大物が出るわけないだろう。それに、ヴォルダンとの国境に近い場所だ。危険すぎる」
「大丈夫だ。俺たちがいるんだから」ラーンは胸を叩き、自信満々に言った。「それに、テルヘルさんが言うように、あの遺跡には何かあるはずだ。きっと大穴が見つかるぞ!」
テルヘルの表情は硬く、自分の目的とは違う方向に話が流れていることに少し苛立ちを感じていた。だが、彼らが遺跡に潜る理由を理解していた。彼らはそれぞれ「人生」の中で何かを探し求めていたのだ。ラーンは夢を、イシェは安定を、そして彼女は復讐を。
洞窟の入り口は狭く、湿った空気が流れ込んでくる。ラーンの焚き火の光が壁に踊る影を描き、不気味な雰囲気を漂わせる。「ここからは俺たちが先導する」テルヘルは鋭い視線で周囲を警戒した。「気を引き締めて進もう」。
彼らは慎重に洞窟の中へ足を踏み入れた。一歩ずつ、希望と不安を胸に抱いて。