ビレーの酒場に響く大笑い声。ラーンが豪快に酒を傾けながら、今日の遺跡探索を振り返っていた。「ああ、あの古代の魔導具は凄かったぜ!イシェ、お前も見てたよな?あの光!」
イシェは苦笑しながら、ラーンの肩を軽く叩いた。「確かに Impressive だわ。でも、またしてもトラップにはまったせいで損害は大きかったし、報酬もほとんどなかったじゃないか。」
「まあ、大穴を見つければ一発で元が取れるって!それに、あの魔導具はきっと高く売れるぞ!」ラーンの瞳は輝いていた。
そこに、テルヘルが静かに加わる。「そんな楽観的な考えは捨ててください。ヴォルダンとの戦いを考えると、今すぐに資金が必要だ。」彼女は鋭い視線で二人を見据えた。「次の遺跡探索は、より危険な場所になるだろう。覚悟しておけ。」
ラーンの顔色が少し曇る。しかし、すぐにいつもの笑顔を取り戻し、「大丈夫だ、テルヘル!俺たちは最強のチームだろ?どんな危険も乗り越えられる!」と豪快に笑った。イシェは彼の楽観性に少し苛立ちを感じながらも、どこか安心していた。
酒場の一角では、旅人たちが賑やかに歌を口ずさんでいた。「あの歌…聞いたことあるような…」イシェはかすかに懐かしさを覚えた。それは故郷の音楽だった。かつて家族と楽しく過ごした日々を思い出し、胸が締め付けられた。
「イシェ、どうした?」ラーンの声が聞こえた。「何かあったのか?」
イシェは深く息を吸い、「いいえ、何もないわ。」と答えた。しかし、心の奥底では、故郷の穏やかな風景と、今はもう戻れないその生活が鮮やかに蘇っていた。
夜が更け、酒場から街へ帰る道すがら、ラーンはイシェに肩を叩きながら言った。「おい、イシェ!明日は俺たち、大穴を見つけるぞ!」
イシェは小さく頷いた。ラーンの言葉には、いつも通りの無謀さと希望が詰まっている。しかし、彼女には今、少しだけ異なる感情が芽生えていた。それは、この世界に深く根付いた苦しみと希望、そして、いつか必ず訪れるであろう自由への渇望だった。
「そうだな…」イシェは小さく呟いた。「大穴を見つけよう。」