ラーンの粗雑な剣 swing が埃を巻き上げ、薄暗い遺跡の奥深くへと消えていく。イシェは眉間に皺を寄せながら、足元を注意深く確かめた。ラーンにはいつもどこまでも無頓着で、そのせいでイシェはいつも気を揉めていた。
「本当にここに何かあるのか?」イシェが呟くと、ラーンは振り返り、「お前が言いたいのは、俺の鼻の下にあるか?」と笑った。イシェはため息をつきながら、彼の背後から続いた。テルヘルは二人より少し遅れて歩いており、時折石版に刻まれた文字を指でなぞっている。
「この遺跡はヴォルダン軍が一時的に拠点にしていた可能性が高い」とテルヘルが言った。「ここに眠る遺物は、ヴォルダンにとって重要な意味を持つものだったはずだ」彼女の目は鋭く光り、まるで過去の影を追うかのように。
彼らは遺跡の奥深くへと進み、やがて広間に出た。中央には巨大な石棺が安置され、その周りには崩れかけた柱が立ち並んでいる。ラーンは興奮気味に棺に近づこうとしたが、イシェが彼の腕を掴んだ。「待て!何か罠があるかもしれない」と警告した。
テルヘルは慎重に石棺に近づき、表面の模様を調べ始めた。「この模様…ヴォルダンの紋章だ」彼女は呟いた。「ここに眠るのは、ヴォルダンにとって重要な人物なのかもしれない」
その時、石棺の蓋が突然激しく振動し始めた。ラーンとイシェは驚いて後ずさりする。テルヘルは冷静さを保ち、「何かが起ころうとしている…逃げろ!」と叫んだ。
石棺の蓋が開き、そこから黒い影が溢れ出した。それは無数の亡霊のような存在で、空気を歪ませながら襲いかかってきた。ラーンは剣を抜き、勇敢に立ち向かったが、亡霊たちは数が多く、彼の攻撃をかわし続けた。イシェは素早く動き回って亡霊を避けながら、テルヘルに指示を出した。「あの石棺の紋章を破壊しろ!それがこの亡霊を封じる鍵だ!」
テルヘルは剣を抜いて石棺に駆け寄り、紋章を叩きつけた。その時、遺跡全体が激しく揺れ始めた。亡霊たちは苦しげにうなり声を上げ、徐々に消滅していった。石棺の蓋が再び閉まり、静寂が戻った。
ラーンは息を切らしながら立ち上がり、イシェとテルヘルを見つめた。「どうなってるんだ?」と彼は尋ねた。テルヘルは疲れた表情で答えた。「ヴォルダンが眠る場所…そして、彼が利用した力の一部だ。この遺跡はヴォルダンと俺の運命が交錯する場所なのかもしれない」
イシェは石棺に目をやった。そこに眠るものは、ヴォルダンの過去と未来、そして彼らの行く末を左右する鍵なのかもしれない。彼らは互いに深く関わっていたのだ。そして、この交錯は今始まったばかりだった。