ビレーの喧騒を背に、ラーンはイシェの眉間に刻まれた皺を眺めていた。遺跡探索の依頼を受けたばかりだが、イシェはいつも以上に表情が曇っている。
「どうした? イシェ。何か気になることがあったのか?」
ラーンの問いかけに、イシェはため息をついた。「テルヘルについてだ。あの女性の目的…一体何なのだろうか?」
「大穴を掘り当ててヴォルダンに復讐するって言ってやがっただろ。それだけじゃないのか?」
ラーンはそう言うが、イシェの不安は晴れない。「復讐という言葉の裏に何かあるような気がして…」
テルヘルは謎が多い。彼女が語る過去は断片的なもので、ヴォルダンとの関係も曖昧だ。だが、彼女の瞳には燃えるような憎悪と、どこか切ない哀しみがある。それはまるで…交配によって歪められた植物のように、本来の姿からはかけ離れた何かを感じさせる。
「よし! わかった! イシェの心配を晴らすためにも、テルヘルについてもっと調べてみるか!」
ラーンはいつものように明るく宣言するが、イシェは彼の笑顔に僅かな不安を感じる。彼らの前に広がる遺跡には、単なる財宝や危険だけではない何かが眠っているようだった。それは、テルヘルの過去と深く交錯し、彼らを巻き込んだ暗い影のように迫っていた。