ビレーの賑やかな市場の通りを縫うように歩を進めるラーンとイシェ。二人はテルヘルの依頼で、街から少し離れた場所にある遺跡へ向かう途中だった。
「なあ、イシェ、本当にあの遺跡で何か見つかると思うか？」
ラーンの問いかけに、イシェは眉間に皺を寄せた。「確証はない。だが、テルヘルがそこまでして探しているということは、何か重要なものがある可能性が高い。」
テルヘルは、ヴォルダンとの過去に何かあると噂されていた。その復讐のために遺跡を探し回るという彼女の目的は、ラーンには理解できない部分が多かった。イシェもまた、テルヘルの過去についてはほとんど知らなかった。しかし、彼女の執念深い眼差しから、何者かへの強い憎しみを察知していた。
遺跡の入り口に立つと、そこはまるで巨大な口を開けた獣のようだった。朽ち果てた石造りの門は、かつて栄華を極めた文明の残骸を物語っていた。ラーンが剣を抜き、イシェは慎重に周囲を見回した。
「よし、いくぞ。」
ラーンの言葉に導かれ、三人は遺跡へと足を踏み入れた。内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には何やら奇妙な記号が刻まれており、不気味な雰囲気を醸し出していた。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。道中、幾度となく罠に遭遇するも、ラーンの力強さとイシェの機転によって難を逃れた。やがて、彼らは広大な地下空間へとたどり着いた。そこは、まるで巨大な祭壇のような構造物で満たされていた。
「これは…」
イシェは息を呑んだ。祭壇の中央には、光る球体が浮かんでいた。それはまるで、世界の中心にある心臓のようだった。
その時、後ろから冷たい声が響き渡った。「ついに辿り着いた…」
振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。彼女の目には、狂気じみた輝きが宿っていた。
「この球体は、ヴォルダンの弱点を握る鍵になる。これで、ついに復讐を果たせる…」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らは、テルヘルの真の目的を初めて知ったのだ。そして、その背後には、壮絶な過去と、交わるべきではなかった運命があったことを悟った。