「準備はいいか?」ラーンの粗い声とイシェの静かなため息が、薄暗い遺跡の入り口にこだました。テルヘルは背後から、「無駄な時間を過ごしているようには見えないぞ」と冷めた視線を向けてきた。
ラーンはいつものように無邪気に笑みを浮かべ、「大穴が見つかる予感がするぜ!」と豪語したが、イシェはテルヘルの鋭い眼光にわずかに動揺した。最近、テルヘルの態度が少し変わっていることに気付いていたのだ。以前は冷酷な businesswoman のような印象だったが、最近は何かを隠しているかのような、不穏な影を漂わせるようになっていた。
遺跡内部は湿気を帯びた冷たい空気で満たされていた。ラーンは慣れた手つきで剣を抜き、イシェは細長い杖から青い光を放ちながら周囲を探った。テルヘルは後方から慎重に進んでいく。彼女の目は常に周囲を警戒しており、時折、何かを察知したかのように首を傾げていた。
深い闇の中に、崩れかけた石柱が立ち並び、壁には古びた絵文字が刻まれていた。イシェは「ここには何かがある」と呟き、指先で壁の模様をなぞった。ラーンの視線は、床に落ちている古びた宝箱に釘付けになった。
「おい、大穴だ!」
ラーンが叫んだ時、突然後ろから激しい衝撃を受けた。イシェは振り返ると、テルヘルが剣を抜き、ラーンに向かって襲いかかっていた。
「裏切り者め!」ラーンの怒号が響き渡る中、イシェは驚きと混乱に襲われた。なぜ?なぜテルヘルがラーンを攻撃するのか?彼女は一体何を企んでいるのか?
テルヘルの顔は冷酷な笑みで歪んでいた。「お前たちはただの道具だった。ヴォルダンに復讐するためには、お前たちの力を利用する必要があっただけだ」
イシェは動揺しながらも、冷静さを保とうとした。「待て、テルヘル。一体何がしたいんだ?」
テルヘルは剣を振り下ろした。「お前たちに理解できるはずがない」と冷たく言い放ち、イシェへと襲いかかった。
その時、遺跡の奥深くから不気味な音が響き渡った。それはまるで、何かの巨大な目覚めのような音だった。三人は一瞬の間、動きを止めた。その音は、彼らにとって予期せぬ脅威の存在を示すものだった。