ラーンが遺跡の入り口で、興奮気味に剣を構え始めた。「よし！今回は必ず何か見つかるぞ！」と叫ぶ彼の声は、薄暗く湿った洞窟内に響き渡った。イシェは眉間にしわを寄せながら、「また大騒ぎだな…」と呟いた。いつも通りラーンの熱意に巻き込まれてしまったのだ。
テルヘルは静かに後ろから二人を見つめていた。「準備はいいか？」彼女の鋭い視線は、まるで洞窟の奥底にある何かを見据えているかのようだった。イシェはテルヘルの視線を感じて背筋がゾッとする。彼女にはラーンの無計画さに呆れながらも、どこか頼りにしていた部分があった。
「よし、行くぞ！」ラーンが先頭を切って洞窟に踏み出した。イシェは小さくため息をつき、テルヘルに目配せをしてから、ゆっくりとラーンの後を続いた。テルヘルもまた、彼らを静かに見つめながら、遺跡の奥へと進んでいく。
遺跡内部は複雑な迷路のように続いており、湿った空気中にカビ臭い匂いが漂っていた。壁には古びた彫刻が刻まれており、時折不気味な影が揺らめく。ラーンの足取りは軽快だが、イシェは慎重に足元を見て進んでいた。
「おい、イシェ！もっと hurry up！」ラーンが振り返り、イシェを急かしている。イシェはため息をつきながら、「もう少しゆっくりと…」と言いかけるが、その瞬間、床が崩れ、ラーンが深い穴へ転落してしまった。「ラーン！」イシェとテルヘルが同時に叫んだ。
イシェは慌てて穴の縁に駆け寄り、ラーンの姿を探した。しかし、深い闇の中からは何も見えない。恐怖で心臓が激しく鼓動する中、イシェはテルヘルの視線を向けると、彼女は冷静に状況を判断しているように見えた。
「大丈夫だ。私はロープを持ってきた」テルヘルは落ち着いて言った。「ラーンを助けに行く。お前はここに待て」。イシェは頷き、テルヘルが用意したロープをしっかりと握りしめ、ラーンの救出を祈った。
テルヘルは深い闇の中へ消えていった。イシェは一人で不安な時間を過ごさなければならなかった。
「二番手」であるイシェはいつもラーンの影に隠れる存在だった。しかし、今回の事件では、ラーンの無謀さが彼を危険な状況に陥れ、イシェは自分の力で仲間を救わなければならない立場になったのだ。