「おい、イシェ、起きろよ!」
ラーンがイシェの肩を叩き起こした。薄暗い部屋の中、イシェは眠そうな目をこすった。
「まだ朝ぼらけだよ、ラーン。もう少し…」
「そんなこと言ってられる時間はないぞ!テルヘルが待ってるんだ」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。「わかったわかった」と呟きながら起き上がった。
今日はヴォルダンとの国境付近にある遺跡を探索する予定だった。テルヘルから高額の日当を約束されたのだ。しかし、イシェは不安を感じていた。最近、ラーンの行動が荒く、計画性がないことにイシェは呆れていた。
「あの遺跡は危険だって聞いたぞ」とイシェは言った。「本当に大丈夫なのか?」
ラーンは笑いながら、「大丈夫だ、大丈夫!俺が守ってやるからな!」と言った。イシェは彼の言葉に少し安心したものの、不安は消えないままでいた。
テルヘルはいつも通り、冷静沈着に指示を出していた。遺跡の入り口付近に仕掛けがあることを警告し、慎重に進むよう命じる。ラーンはテルヘルの指示に従いながらも、どこか落ち着きがないように見えた。イシェはラーンの様子をじっと見ていると、彼の足元にある小さな石が転がり落ちたことに気がついた。
「ラーン、気をつけろ!」
イシェの叫び声と共に、地面が崩れ始めた。ラーンはバランスを崩し、深淵に落ちていく。
「ラーーン!」
イシェは絶叫しながらラーンの手を掴もうとしたが、届かなかった。
「くそっ…!」
イシェは立ち尽くしたまま、ラーンの姿が見えなくなった場所に目をやった。彼は深く息をつき、冷静になるために深呼吸を繰り返した。「落ち着け、イシェ。まだ諦めるには早い。」そう呟きながら、彼はテルヘルに駆け寄った。
「ラーンが…!」
イシェは言葉を詰まらせた。テルヘルは冷静に状況を判断し、「彼を助けられる可能性がある場所を探せ」と指示した。イシェはテルヘルの指示に従い、遺跡内を探索を開始した。しかし、彼の心には不安が渦巻いていた。
ラーンは無事なのか?彼を助けることはできるのか?そして、なぜラーンの行動は最近、こんなにも危険になっているのか?イシェはこれらの問いに答えを求めながら、遺跡の奥深くへと進んでいった。