「よし、今日はあの崩れた塔だな！」ラーンが目を輝かせた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せていた。「また大穴だなんて、そんな宝なんか見つからないよ。それにあの塔は危険だって聞いたわ。」
「大丈夫だ、イシェ。俺が行くから。」ラーンは自信満々に笑った。テルヘルは冷静に地図を広げ、「情報によると、塔の地下にはヴォルダンが遺した何かがあるらしい。それが何なのかはわからないが、我々の目的には繋がるかもしれない」と呟いた。
ビレーを後にし、荒れ果てた平原を進む三人。ラーンの軽快な足取りとイシェの慎重な歩み、テルヘルの鋭い視線。三人は互いに異なるペースで、それでも一つの目標に向かって進んでいく。崩れた塔は、まるで巨大な石の迷宮のようだった。日差しが差し込む隙間から埃が舞い上がり、時折聞こえる不気味な音が二人の心を不安にさせた。
「ここが入り口だな。」ラーンが錆びついた扉を押し開けた。内部は暗く、湿った空気で満たされていた。イシェは小さな光る石を取り出し、周囲を照らした。「気をつけろ、何かいるかもしれない」と呟いた。
塔の中を進むにつれ、壁には古代の文字や奇妙な模様が刻まれていた。ラーンは興味津々にそれらを眺めていたが、イシェは不吉な予感を抱いていた。
地下深くまで降りると、巨大な石棺が置かれていた。その上には、ヴォルダンの紋章が輝いていた。「これか…」テルヘルは呟きながら近づいた。石棺を開けると、そこには何もなかった。代わりに、空虚な空間が広がっていた。
「何だ？何もないぞ！」ラーンが声を荒げた。イシェも肩を落とした。「一体何を期待していたの？」
その時、地面が激しく揺れた。天井から岩が崩れ落ち、三人は慌てて身をかわした。壁から乾坤図のような模様が浮かび上がり、空間に奇妙な光が充満した。
「これは…！」テルヘルは言葉を失った。彼女がヴォルダンに奪われたもの、復讐の対象であるものは、この塔の中に眠っていたのだ。それは単なる財宝や遺物ではなかった。遥か昔の文明、そして乾坤そのものを司る力だった。