「よし、今日はあの洞窟だ!」
ラーンが興奮気味に地図を広げると、イシェは眉間に皺を寄せた。
「またあの危険な場所? ラーン、あの洞窟は遺跡調査隊ですら避けてるって聞いたよ。何かあったら責任取れないわ」
「大丈夫だって! 俺の直感が言ってるんだ!」
ラーンの自信に満ち溢れた言葉にイシェはため息をついた。ラーンはいつもこうだ。危険を顧みず、自分の直感に従う。イシェが幼い頃からラーンの無謀さに手を焼いてきたのは、彼を「兄」のように慕っていたからなのだ。
「いいわよ、わかった。でも何かあったら責任はテラに押し付けちゃダメよ」
イシェは小さく呟きながら、準備を始めた。
テルヘルは冷静な目で二人を見つめていた。ラーンの無謀さは彼女には理解できないが、彼の持つエネルギーと情熱には惹かれた。それに、彼らが遺跡から持ち帰る遺物は彼女の復讐に役立つかもしれない。彼女はそう信じていた。
「よし、行こう!」
ラーンが先頭を切り、洞窟へと踏み込んだ。イシェはテルヘルと共にその後に続いた。洞窟の奥深くには、かつて誰かが作ったと思われる複雑な通路が広がっていた。壁には不思議な模様が刻まれており、薄暗い空気を漂う独特の臭いを感じさせた。
「ここ…何か変だ…」
イシェは不安を覚えた。ラーンの直感にはいつも従ってきたが、今回は違うと感じたのだ。彼女は本能的に危険を察知した。
その時だった。洞窟の奥から低い唸り声が聞こえてきた。
「何だ!? 」
ラーンが剣を抜くと、イシェも daggersを構えた。テルヘルは冷静に周囲を観察していた。影の中から何かが動き始めた。それは巨大な獣の姿だった。鋭い牙と爪を持ち、赤い目を光らせていた。
「くそっ! これはまずいぞ!」
ラーンは獣に向かって突進し、剣を振り下ろした。しかし、獣の硬い皮膚には傷一つつかなかった。イシェはラーンの動きを見て焦る。
「ラーン、やめて! あれには勝てない!」
しかし、ラーンの怒りは収まらず、獣との戦いを続けていた。イシェがラーンを助けようとしたその時、テルヘルが前に出た。
「待て!」
テルヘルは冷静に獣の動きを観察し、その弱点を見極めた。彼女は素早く動き、獣の背後から攻撃を加えた。獣は痛みに唸り声を上げ、テルヘルに襲いかかった。しかし、テルヘルは冷静さを失わず、獣をかわしながら攻撃を続けた。
イシェはラーンの助けを求めようとしたが、彼はまだ獣と戦いを続けている。イシェは力を振り絞り、ラーンに叫んだ。
「ラーン! テルヘルの指示に従え!」
ラーンの耳にイシェの声が響き渡った時、彼はようやく冷静さを取り戻した。テルヘルと共に獣を攻撃し始めた。
三人の協力により、ついに獣は倒れた。
「よかった…」
イシェは安堵のため息をついた。ラーンは疲れた様子で剣を地面に突き立て、テルヘルに感謝の言葉を述べた。
「ありがとう、テルヘル。お前がいなければ僕らは…」
「いいのよ。これで目的達成?」
テルヘルは冷静に尋ねた。イシェは振り返り、洞窟の奥深くに目を向けた。そこにはまだ見ぬ遺跡の入り口があった。
「さあ、行くぞ。大穴を掘り当ててやる!」
ラーンがそう宣言すると、イシェとテルヘルも頷いた。三人は再び遺跡へと足を踏み入れた。