ラーンが「大穴」を見つけた！と叫んだ時、イシェは眉間に皺を寄せた。「またか？」と吐き捨てるように言った。ラーンの目は輝いて、興奮気味に遺跡の奥へと続く崩れかけた通路を指差した。「今回は違うって！なんか感じるんだ、今回は！」
イシェはため息をつきながら、テルヘルを見た。「どうする、テルヘルさん？」
テルヘルは静かに周囲を見渡した。遺跡の空気はいつもより重く、不気味な静けさだった。まるで何かが忍び寄っているかのような感覚に襲われた。
「行く」とだけ言い、テルヘルは先頭へ歩み出した。イシェは渋々ラーンの後について行き、ラーンは興奮気味に二人の後ろをついていった。
通路は狭く、天井から石灰岩の粉がパラパラと落ちてくる。足元は滑りやすく、不安定な足取りで進むのがやっとだった。
「ここは一体…」イシェは呟きながら、壁に刻まれた奇妙な文字を指さした。ラーンはそれを見て、「古代語か？読める人いるのかな？」と興奮気味に言ったが、イシェは首を横に振った。「知らない…見たことのない記号だ」
その瞬間、通路の奥から冷たい風が吹き抜けた。まるで何かが息を吐き出したかのように。石塵が舞い上がり、視界を遮り、三人は一瞬にして不安定な足取りでよろめいた。
「なんだこれは…」イシェは咳払いしながら言った。「何か変だ」
その時、通路の天井から大きな音がした。石灰岩の塊が崩れ落ち、ラーンとテルヘルが身をかわすのがやっとだった。イシェは一瞬遅れて、崩れ落ちる石に足を挟まれそうになった。
「イシェ！」ラーンの叫び声が響き渡った。
ラーンはイシェを助けようと飛び掛かったが、その瞬間、通路の天井からさらに大きな衝撃が起きた。まるで巨大な翼が羽ばたいたかのように、乱気流が発生し、三人は吹き飛ばされた。