ラーンの大斧が石壁に激突し、砕けた石塵が空中に舞った。
「よし、開いたぞ!」
彼は満面の笑みで振り返り、イシェの顔をじっと見つめた。「ほら、言ったろ?必ず道が開けるって」
イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れかけた通路を見下ろした。「まだ先が長いわ。油断するな」
だが、彼女の言葉はラーンの耳には届いていなかった。彼はすでに次の遺跡への興奮で頭がいっぱいだった。
彼らの前に広がるのは、ヴォルダンからの亡命者たちが築いたという古代の都市跡だった。その遺跡は、かつて栄華を誇った文明の残骸と、それを取り巻く危険な罠で満ちていた。
「おい、ラーン、待て!」
イシェが叫んだが、ラーンの足は止まらない。彼はすでに奥深くまで足を踏み入れていた。彼の背後からはテルヘルが静かに歩み寄るように近づいてくる。彼女は鋭い目で周囲を警戒しながら、時折ラーンの後ろ姿をじっと見つめていた。
「この遺跡には何かある気がする」テルヘルは低く呟いた。「何か大きなもの…」
イシェはテルヘルの言葉に少し身震いした。彼女はいつも以上に緊張を感じていた。
遺跡の奥深くでは、彼らの行く手を阻む巨大な石壁がそびえ立っていた。壁には複雑な模様が刻まれており、その一部はすでに崩れ落ち、時間を超えてゆっくりと崩壊しつつあった。
「どうするんだ?」イシェが不安そうにラーンに尋ねた。「この壁を乗り越えるには…」
ラーンの視線は壁の奥へと向けられた。そこにはかすかに光るものが見えた。それは古代文明の秘宝なのか、それとも彼らの命を奪う罠なのか。
「行くぞ!」
ラーンは力強く叫び、石壁に向かって突進した。イシェはためらいながらも彼の後を追いかけ、テルヘルも静かにその背後からついていった。彼らの前に広がる道は険しく、危険に満ちていた。しかし、彼らはそれを乗り越える決意を固めていた。
なぜなら、彼らにはそれぞれの夢があったからだ。