「よし、今回はあの崩れかけた塔だな」ラーンが地図を広げ、指を置いた。イシェは眉間にしわを寄せた。「また危険な場所かい？あの塔は地元の人々に忌み嫌われているぞ。何か悪い噂があるって聞いた気がする」
「そんなの気にすんな！きっと大穴が眠ってるんだ！」ラーンの豪快な笑いに、イシェはため息をついた。テルヘルは静かに剣を研ぎながら言った。「噂は無視していい。重要なのは、塔に何があるかだ。私達の目的は、ヴォルダンに復讐するための力を手に入れることだ」
ビレーを出発し、日暮れ間近の荒涼とした平原を歩いていると、ラーンの足が止まった。「おい、イシェ。あの影は何だ？」遠く、塔の影から、不気味な黒い影が伸びているのが見えた。
「何かの幻覚か？」イシェは不安そうに言ったが、テルヘルは冷静に言いました。「近づいてみよう」
塔への階段は崩れ落ち、足場も危うい状態だった。ラーンが先頭に立って進もうとした時、影の中から黒い影が現れた。巨大な獣のような姿で、鋭い牙と爪を剥き出しにして襲いかかってきた。
「なんだこれは！」ラーンは剣を構えたが、獣の攻撃は激しく、彼を吹き飛ばしてしまった。イシェは驚愕し、テルヘルは冷静に状況を判断した。「これはただの獣ではない。何かしらの呪いを受けたものだ」彼女は剣を抜くと、獣の攻撃をかわしながら、ラーンの元へと駆け寄った。
激しい戦いの末、獣は倒れた。しかし、その影にはまだ何かが潜んでいるようだった。イシェが塔の中へ足を踏み入れると、壁一面に書かれた奇妙な文字が目に入った。「これは…？」彼女は手を伸ばした瞬間、文字が光り、部屋全体を包み込んだ。
意識を取り戻した時、イシェは自分が塔の最上階に立っていることに気づいた。そして、目の前に広がる光景に息を呑んだ。そこには、巨大な装置があり、その中心には、輝く球体が浮かんでいた。球体から放たれる光が、塔全体を照らし出していた。
その時、ラーンとテルヘルが駆けつけた。「イシェ！どうした？！」
イシェは言葉を失い、ただ球体の方へ指さすことができた。テルヘルは冷静に状況を分析し、「これは…ヴォルダンが狙っているものかもしれない。何か重要な力を持っている可能性がある」と言った。ラーンは興奮気味に言った。「よし！これで大穴が見つかったぞ！」
しかし、イシェの表情は暗いままだった。彼女は、この装置がもたらすものは、単なる財宝や力ではないという予感がした。そして、その予感は、彼女を深い不安に陥れることになった。