ラーンの大口を開けて笑う顔は、いつも通り太陽のように眩しかった。遺跡の入り口前で、イシェは彼の肩越しにチラリと見た。深い闇に飲み込まれそうな洞窟は、まるで巨大な獣の口を彷彿とさせた。
「よし、今回は絶対何か見つかるぞ!」
ラーンの言葉が、イシェの不安な心をさらに掻き立てる。いつも通り、彼は計画も準備もなく、ただ「大穴」という夢に突き動かされているように見えた。イシェはため息をついた。「またしても、何も考えずに飛び込むつもりなのね?」
「そうだぞ!だって、ここには必ず何かあるはずだ!」
ラーンの言葉に反論する気力も失せ、イシェはテルヘルに視線を向けた。彼女はいつも冷静沈着で、ラーンの無茶な行動を制止しようと試みることもあったが、今回はどこか諦め顔だった。「準備はいいかい?私は先に進む」とだけ告げて、テルヘルは洞窟の闇へと消えていった。
イシェはラーンに「待て!」と叫びかけたが、彼の足取りはすでに軽やかで、まるで獣のように洞窟へ飛び込んでいく。イシェは仕方なく後を追いかけた。
洞窟の中は予想以上に暗く、湿った空気はカビ臭い匂いを漂わせていた。ラーンの懐中電灯の光は、壁に映る影を不気味に揺らし、イシェの不安をさらに増幅させた。
「ここ…何か変だぞ…」
ラーンの声が震えていた。イシェも彼の言葉に同意した。洞窟の奥から、かすかに聞こえる不自然な音。それはまるで、金属が擦れ合うような音だった。
進むにつれて音が大きくなり、やがて彼らは広大な空間にたどり着いた。そこには、巨大な機械装置が静かに佇んでいた。複雑に絡み合った歯車やパイプは、かつて何らかの目的のために動いていたことを物語っていた。そしてその中心には、輝く球体が浮かんでいた。
「これは…」
イシェの言葉は途絶えた。球体から放たれる光は、まるで生きているかのように脈打つように輝き、彼らを魅了した。その時、突然、機械装置が動き始めた。
ギシギシと歯車が回り始め、パイプから蒸気が噴き出した。そして、球体はゆっくりと回転し始め、その光は激しく輝き始めた。イシェはラーンに叫んだ。「逃げよう!」
しかし、ラーンの足は動かなくなっていた。彼はまるで石像のように、球体の光に吸い込まれるように見えた。イシェはラーンの手を引っ張ったが、彼の体は重く、動かなかった。その時、イシェの耳元でテルヘルの声が響いた。「すぐに逃げなさい!」
イシェは振り返ると、テルヘルが機械装置に向かって何かを放っていた。その瞬間、激しい光が洞窟を満たし、イシェは意識を失った。