「準備はいいか?」ラーンの粗い声と、イシェの小さく頷く姿が、薄暗いビレーの tavern の隅で揺らめくろうそくの炎に映し出されていた。テルヘルはテーブルに広げた地図を指差した。「目標は南西の丘陵地帯にある遺跡だ。そこにはヴォルダン軍が奪取しようとしていると噂される古代兵器の残骸があるらしい。」
ラーンの顔色が一瞬曇り、イシェはテルヘルの鋭い視線を感じながら小さく息を呑んだ。二人はこの依頼を受ける前に、テルヘルからヴォルダンに関する話を聞いていた。かつて彼女はヴォルダンに全てを奪われ、復讐を誓う存在だと。そして、その復讐のために遺跡探索という危険な仕事に手を染めているのだ。
「報酬は約束通りだ。」テルヘルは冷静に言った。「だが、今回は特別だ。遺跡の奥深くには強力な罠が仕掛けられているという情報がある。我々の目的達成には、君たち二人の力が必要不可欠だ。」
ラーンの表情が少し晴れた。「わかった。俺たちを頼れよ」と豪語する彼の背中には、どこか不安げなイシェの姿が重なった。テルヘルは彼らの表情を見据えながら、小さく唇を動かした。「成功を祈る。そして、忘れるな...我々にとって、この遺跡探索はただの宝探しではない。」
翌日、三人は遺跡へと向かった。ラーンとイシェは慣れた手つきで遺跡の入り口を調査し、テルヘルは背後から警戒を怠らなかった。遺跡内部は湿気を帯びた冷たい空気で満たされ、壁には謎の文字が刻まれていた。
「ここが罠の仕掛けられた場所か?」イシェが地図を確認しながら呟いた。「この記号...これは警告だ。」彼女は慎重に足を踏み入れると、床が崩れ始め、深い穴に落ちていくラーンの姿が見えた。イシェは驚いて声を上げたが、テルヘルは冷静に reacting し、ラーンの手を掴み引き上げた。
「気をつけろ!罠には両刃の剣があることを忘れるな」テルヘルの言葉は重く響いた。
ラーンの顔は蒼白だった。「...俺を助けたのか?」彼は驚きの声を漏らした。テルヘルは彼の目に熱い視線を向け、「目的のために協力するだけだ。無駄な死は避けたいのだ。」と答えた。イシェは二人のやりとりを静かに見て、何かが変わったと感じた。
彼らは遺跡の奥深くに進むにつれて、ヴォルダン軍との遭遇の可能性も高まっていった。そして、ついに古代兵器の残骸を発見するが、そこには強力な魔力が宿り、制御不能に陥っていた。
ラーンの剣は破壊され、イシェの冷静さも失われそうになる中、テルヘルは自ら犠牲になり、その魔力を封じるための儀式を始めた。彼女の決意は揺るぎないものだった。
「この世界を救うために...ヴォルダンに復讐するために...」
テルヘルの言葉は、遺跡の奥深くで響き渡った。ラーンとイシェは、彼女が抱える両刃の剣の重さに気づき、そして、その犠牲に報いる決意を固めたのだった。