ビレーの酒場「荒くれ者の憩い」は、いつも以上に活気がなかった。ラーンの豪快な笑い声も、イシェの冷静な呟きも、いつもより小さく聞こえた。カウンター越しにマスターが顔をしかめた。「最近、街は妙に静かだな。あの騒ぎで世論が冷めてしまったんだろうか?」
ラーンは苦笑した。「あの遺跡の件か?ああ、確かにあの大穴は大きかった。でも、結局何も見つからなかったんだろ? だからって、俺たちの夢を諦めるわけにはいかないぜ!」 イシェは眉間に皺を寄せた。「あの時、テルヘルが急いで遺跡から引き上げたのは何だったんだろう。何か見つけたのか?」
「知らねえよ。あいつはいつも自分のことは黙っているよな。」ラーンは酒をぐいっと飲み干した。「でも、あの騒ぎで世論が冷めてしまったのは確かだ。俺たちにはもう、ビレーで遺跡探索をする余裕はないかもしれないな。」
イシェは静かに言った。「そうだな。新しい場所を探す必要があるかもしれない。」
テルヘルは、二人が話しているのを聞きながら、薄暗い顔つきで酒を飲んでいた。ヴォルダンへの復讐を果たすために、彼女はラーンとイシェを利用していた。だが、あの遺跡での出来事、そしてビレーの世論の変化は、彼女にも大きな影響を与えていた。
「あの大穴には何かがあったはずだ。」テルヘルは呟いた。「あの時、俺たちが感じたもの…それはただの偶然ではない。ヴォルダンが隠しているものは、あの遺跡に深く関わっている。そして、それを暴く鍵は、この世論の変化にあるのかもしれない…」