ビレーの酒場に、イシェが顔をしかめて入ってきた。ラーンのいつもの席には、すでにテルヘルが座り、一杯の酒を傾けていた。
「またか?」イシェは疲れた声で言った。ラーンの顔色は悪く、額に汗をかいていた。「あの遺跡だ。また落盤か?」
ラーンは苦笑いし、テーブルに置かれた空になった水筒を指さした。「今回は俺のせいじゃないんだ。あの崩れ方は自然現象だな」
テルヘルが冷めた目で彼らを眺めていた。「自然現象?そんな言い訳するな。お前たちの無計画さが命を落とすぞ」
イシェはラーンに視線を向け、心配そうに言った。「本当に大丈夫?最近、疲れてるみたいだけど…」
ラーンの顔色がさらに悪くなるのをテルヘルが見逃さなかった。「疲れているなら休めばいい。遺跡はいつでもある」
ラーンは立ち上がり、テーブルを叩いた。「俺には休む時間はないんだ!いつか大穴を見つける。それが俺の夢だ!」
イシェがラーンの腕を掴もうとした時、扉が開き、一人の男が入ってきた。汚れた服を着て、顔に傷跡のある男は、目を輝かせながら言った。「遺跡の情報があるぞ!ヴォルダンとの国境付近にある遺跡で…」
その言葉に、ラーンの目は光り輝いた。イシェは不安な気持ちを抱きながらも、テルヘルは静かに微笑んだ。世情が不安定になる中、遺跡への欲求は人々をさらに狂わせる。