ビレーの酒場で、ラーンは木製の杯を傾けていた。「また外れたのか?」イシェが眉間に皺を寄せながら言った。ラーンの顔にはいつもの自信が影を落としていた。
「まあな、今回は特に何もなかったんだ」ラーンは肩をすくめた。「でも、テルヘルが言うように、あの遺跡は巨大だ。次は必ず何か見つかるさ」
イシェは視線をそらした。「そうさ、必ず見つかるはずだ」と呟いた。しかし、彼女の心には不安が渦巻いていた。最近、テルヘルの要求はエスカレートし、危険な遺跡ばかりに足を踏み入れるようになっていた。
「なあ、イシェ。お前、あの噂を聞いたか?」ラーンが低い声で言った。イシェの耳はピンと立った。「ヴォルダンが新たな兵器開発をしているらしいんだって」
イシェは息を呑んだ。「そんな…」「情報源は確かなのか?」
ラーンは首を横に振った。「誰から聞いたかは言わないだろうな。でも、あのテルヘルが真剣に動いているのは間違いない。何か大きな計画があるはずだ」
イシェは静かに考え込んだ。ヴォルダンとの戦いが近い将来、避けられないものになるかもしれない。そして、その戦いに巻き込まれることになるかもしれないのだ。
「ラーン…」イシェは決意を固めたように言った。「私達の夢は諦めなくてもいい。テルヘルが言うように、あの遺跡には何かがあるはずだ。私たちは探さなければならない」
ラーンの顔に再び自信が戻ってきた。「ああ、そうだな!必ず大穴を掘り当ててやる!」
二人は杯を合わせ、互いの未来を誓い合った。しかし、彼らの心の中には、不穏な影が忍び寄っていた。