ビレーの朝の陽光は、まだ影を落とすほど弱々しかった。ラーンはいつもより早く起きていた。イシェが寝ている顔を見ながら、彼は胸を躍らせた。今日は違う。今日は何かが違うと確信していたのだ。
「イシェ、起きろよ。今日こそ大穴が見つかるぞ！」
イシェは眠ったままだった。ラーンの声に少しだけ眉をひそめただけで、深い眠りに戻っていった。ラーンはイシェの肩を叩き始めた。すると、イシェはようやく目を覚まし、苦笑いした。「またそんな夢でも見たのか？」
「夢じゃないって！今日は何か違うんだ。感じるんだよ！」
イシェは彼を見つめ、小さくため息をついた。「そうだな、お前はいつもそう言うものだ」
テルヘルが到着したのは日が高くなってからだった。彼女は黒曜石のような瞳で、ラーンとイシェを一言も発さずに見て回った。その視線は冷たく、まるで彼らを dissection するかのようだった。
「今日はあの遺跡だ。準備はいいか？」
テルヘルの言葉は短く、力強い。ラーンは興奮を抑えきれず、「準備万端だ！」と叫んだ。イシェはラーンの様子を静かに見ていた。いつもなら冷静に状況を分析する彼女だが、今日はどこか落ち着きがないように見えた。
遺跡は荒廃した石造りの迷宮だった。埃が立ち込める薄暗い通路を進み、彼らは深い地下へと降りていった。時折、かすかな光が壁から漏れてきて、不気味な影を揺らせた。
ラーンの興奮は高まっていった。彼はいつも通り、先陣を切って進んでいった。イシェは彼の後を静かに追う。テルヘルは二人を見下ろしながら、黙々と歩を進めた。
そしてついに、彼らは巨大な石の扉の前に辿り着いた。扉には複雑な模様が刻まれており、見る者の心を惑わせるような美しさがあった。
「ここだ」
テルヘルは扉に触れた。その時、何かの力が扉を震わせた。扉の上部から埃が降り積もり、ラーンとイシェの視界を遮った。
扉が開かれたとき、そこには広大な地下空間が広がっていた。天井から吊るされた巨大な水晶が、薄暗い空間を不気味に照らしていた。中央には、光り輝く石棺が置かれていた。
ラーンの目は輝き、イシェは息を呑んだ。テルヘルは静かに微笑んだ。
「ここに、お前たちが探す『大穴』がある」
しかし、その瞬間、石棺から黒い影が立ち上った。それは巨大な怪物であり、空気を震わせる咆哮を上げた。ラーンの顔色が変わった。イシェは剣を握りしめ、テルヘルは冷静に状況を見極めた。
影が襲いかかってきた時、ラーンは躊躇なく飛び出した。彼は剣を振り下ろす。しかし、影は彼の攻撃をかわし、鋭い爪で彼を襲った。ラーンの体が地面に叩きつけられた。
イシェはラーンを助けようと駆け寄ろうとしたが、影が彼女の前に立ちはだかった。イシェは剣を構え、影と対峙した。
テルヘルは影の動きを冷静に観察していた。彼女は何かを感じ取ったように、ゆっくりと口を開いた。
「これは、お前たちが探す『大穴』ではない」