ラーンが石の破片を蹴飛ばすと、イシェに「またかよ」と呆れられた。「あいつら、いつもこんなぼったくりするんだぞ。遺跡調査なんて大したもんじゃないのに」とラーンは不平をこぼした。
「それはそうだけど、今回は報酬が高いからね。テルヘルがくれた情報だと、あの遺跡には珍しい鉱石があるらしい」イシェは冷静に言った。「それに、今回はテルヘルが調査費用も負担してくれるって聞いたよ」
テルヘルはいつもなら厳しい顔で交渉を進めるが、今回はなぜか快諾していた。その理由は分からなかったが、ラーンとイシェにとっては都合が良い話だった。遺跡へと続く道は険しく、日暮れ前に到着した二人は疲弊していた。
「よし、今日はここで休んで明日から調査だ」ラーンの提案にイシェは頷いた。しかし、夜中にラーンがイシェを起こして言った。「おい、テルヘルが何か企んでいるぞ」ラーンの顔色は悪かった。「あの鉱石、実はヴォルダンに渡すためのものらしいんだ。彼女は遺跡の調査を装い、ヴォルダンに情報を流しているんだ」
イシェは驚きを隠せなかった。テルヘルはヴォルダンへの復讐を誓っていたはずなのに…。「でも、なぜ?」イシェの問いかけにラーンは苦しそうに言った。「どうやら、あの鉱石を手に入れることでヴォルダンは強力な武器を作れるらしいんだ。テルヘルはそれを利用して、裏からヴォルダンを弱体化させようとしているんだ」
イシェは混乱した。テルヘルの真意が分からなかった。復讐のために不正な手段を使うのか?それとも、別の思惑があるのか?次の日の朝、三人は遺跡へと向かった。しかし、イシェの心には不安が渦巻いていた。彼らの前に広がるのは、遺跡の謎とテルヘルの真実に隠された真実だった。