ラーンの大 swing が空を切り、埃が舞った。遺跡の奥深くへ進む道は狭く、天井からは石灰岩の欠片がポタリと落ちてくる。イシェは眉間に皺を寄せながら、後ろから「もっと慎重に」と呟いた。
ラーンは苦笑いで、「大丈夫だ、イシェ。俺の腕前じゃこんなもんで崩れる遺跡なんてないぜ！」と豪語した。だが、彼の顔には自信なさげな影が落ちていた。彼らはテルヘルからの依頼で、この遺跡に眠るとされる古代の兵器を探していた。報酬は高額だったが、危険な遺跡ばかりを指定され、ラーンの腕前では到底敵わないような罠も仕掛けられているらしい。
「見つけたぞ！」テルヘルの声が響き渡った。彼女は崩れた壁際に何かを指差している。「これが噂の…」と呟きながら、慎重に石を動かした。そこには、錆びついた金属製の箱が埋まっていた。イシェは息をのんだ。「まさか本物？」
「よし、これで今日の仕事は終わりだ！」ラーンは興奮気味に言ったが、テルヘルは眉間に皺を寄せた。「待て。」彼女は箱を慎重に持ち上げると、その表面を指でなぞり始めた。「何か変だ…」彼女の目は鋭く光っていた。箱には複雑な紋様が刻まれていて、それはどこか不自然に歪んでいた。
「何だ？」ラーンの問いかけに、テルヘルは答えなかった。彼女は箱を慎重に持ち上げ、後ろに下がるように言った。「ここは危険だ。すぐに逃げよう。」その時、床が大きく揺れ始めた。天井から石が雨のように降り注ぎ、壁が崩れ始める。ラーンとイシェは驚いて振り返ると、テルヘルはすでに遺跡の出口に向かって走っていた。
「待てよ！」ラーンの叫び声は、崩れ落ちる遺跡の中に消えていった。イシェはラーンを引っ張りながら、慌てて出口へと走り出した。だが、崩れた壁の下敷きになりそうになるラーンの腕をつかむと、その瞬間、彼の顔色が青ざめた。「イシェ…」彼はぎこちなく言葉を絞り出した。「俺…」
イシェは彼の言葉の意味を理解しようと必死に頭を働かせたが、その瞬間、背後から激しい衝撃を感じた。意識が遠のいていく中で、彼女はラーンの叫び声と崩れ落ちる遺跡の姿だけが目に焼き付いていた。