ビレーの酒場「荒くれ者」はいつも賑やかだった。ラーンがイシェを引っ張って入ると、いつものように視線が向けられた。彼らは遺跡探索で疲弊した体を引きずりながらカウンターに腰掛けた。
「今日はいい収穫があったぞ、イシェ。あの古代の曜石はなかなかのもんだろ？」
ラーンの豪快な声にイシェがため息をついた。曜石は確かに価値のあるものだったが、ラーンが言うように「いい収穫」というほどのものではなかった。
「あの曜石、市場で売っても大した額にはならないよ。それに、今日は危険だったぞ、ラーン。あの崩落寸前の通路に飛び込んだのは無謀すぎるだろう。」
イシェの言葉にラーンは少しだけ顔を曇らせたが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「大丈夫だ、イシェ。俺たちには運がいいんだ。ほら、見ろ」
ラーンの指さす方向には、黒髪の女性が座っていた。テルヘルだ。彼女は冷徹な瞳で酒を流し込み、周囲の目を無視していた。
「今日の報酬は？」
ラーンがテルヘルに尋ねると、彼女は静かに小袋をテーブルの上に置いた。イシェが中身を確認すると、そこには約束された金額の金貨が入っていた。
「今日はこれで終わりだ。明日も遺跡へ行くのか？」
テルヘルの問いかけに、ラーンはニヤリと笑った。
「もちろんだ！俺たちに大穴があるって噂の遺跡があるんだぞ。いつか必ず、あの財宝を手に入れる！」
イシェがラーンの無謀さにため息をついた時、テルヘルは彼らを見据えた。その瞳には、ラーンが夢見る「大穴」よりも深い何かが宿っていた。それは、冷酷な復讐の炎だった。