「よし、ここだ!」ラーンの声が、埃っぽい遺跡の奥深くからこだました。イシェはため息をつきながら、懐中電灯を照らした。壁には複雑な模様が刻まれており、一部が崩れ落ちている。
「またしても、意味不明な線画か…」イシェは眉間にしわを寄せた。「ラーン、本当にここが宝の在処だと確信できるのか?」
「ああ、ほら見て!」ラーンの指が、壁の一点を示した。「この模様、よく見ろよ。まるで…竜の爪痕みたいじゃないか!伝説の竜が眠る遺跡だとしたら、そこに財宝があるのは間違いない!」
イシェは目を細めた。確かに、その模様は竜の爪痕を思わせるものだった。しかし、それは偶然の一致かもしれない。ラーンの楽観的な性格にはいつも呆れてしまう。だが、彼の不敵な笑顔を見ると、イシェの心にもわずかな期待が芽生えた。
その時、背後から冷たく低い声が響いた。「面白い話だ。竜の爪痕か…」
ラーンとイシェは振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女は鋭い目で壁の模様を睨みつけ、薄く微笑んだ。「もし本当なら、ヴォルダンにとっても価値のあるものだろう。我々が先に手に入れる必要がある」
彼女の言葉に、ラーンの表情が曇った。彼はヴォルダンを毛嫌いしていた。あの国は、彼にとって過去の傷を思い出させる存在だった。
「いいだろう。一緒に探そう」ラーンは剣を握りしめ、不敵な笑みを浮かべた。「竜の爪痕から、我々の運命を切り開こう!」
イシェは、ラーンの背中に続くテルヘルの影を見つめた。彼らの前に広がるのは、未知なる危険と、そして大きな可能性に満ちた遺跡だった。