ビレーの朝焼けが、埃っぽい空気を茜色に染めていた。ラーンはいつものようにイシェを捕まえようと、背後から飛びかかった。
「おい、寝坊するぞ！今日はテルヘルと合流の日だろ！」
イシェは素早く身をかわし、ラーンの腕を掴んで地面に押し付けた。「落ち着きなさい、ラーン。まだ朝早いですよ。それに、テルヘルが待ち合わせ場所を変える可能性もあるでしょう」
「そんなことないって。あの女は約束を守る人だ。それに、今日は大穴が見つかる予感がするんだ！」
イシェはため息をついた。ラーンの無鉄砲さに慣れているとはいえ、最近は彼に不安を感じることも増えた。テルヘルの目的が何か、そしてなぜ自分たちを雇ったのか。彼女の過去は謎に包まれており、イシェにはどこか不気味な雰囲気を感じさせる。
ビレーの街はずれで、三人はテルヘルと合流した。彼女はいつものように黒いマントをまとい、鋭い眼光で周囲を見回していた。
「準備はいいか？」テルヘルは冷たい声で言った。「今日は特に注意が必要だ。遺跡に近づくにつれてヴォルダンの影が濃くなる」
ラーンは闘志を燃やしているようだったが、イシェは心の中で不安を感じていた。ヴォルダンとの関わり、そしてテルヘルの復讐心。その全てが彼らを危険な場所に連れて行くような気がした。