ラーンの大口が空気を切り裂く。「今回は絶対、何か見つかるぞ!俺の直感だ!」
イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの背後から彼の荷物を引っ張った。「また直感か?あの洞窟を3時間も探しても何も無かっただろ。宝探しなんて、いつになったら諦めるんだ?」
「諦めないよ、だっていつか必ず大穴が見つかるはずだもん!」ラーンは振り返り、イシェに燦燦と笑いかけた。その笑顔は、まるで太陽のように眩しかったが、イシェには不協和音のように響いた。
ビレーの街を囲むように広がる山脈には、数え切れないほどの遺跡が存在した。かつて栄華を極めた文明の残骸は、今や人々の好奇心と欲望の対象となっていた。ラーンとイシェは、そんな遺跡を日課のように探検し、わずかな報酬を得て生計を立てていた。
「ほら、テルヘルさん、こっちだ!」
ラーンの声が響き渡る。彼は洞窟の入り口に立っていた。テルヘルは冷静な眼差しで彼らをみ下ろした。「この遺跡の情報は確実なのか?」彼女の口調は常に冷酷だった。
イシェはテルヘルの鋭い視線を感じながら、小さく頷いた。「ラーンの直感だと…」
「直感か…。」テルヘルはため息をつき、剣を構えた。「では、進もう。ただし、危険を感じたらすぐに引き返すぞ。」
洞窟の内部は薄暗く、湿った空気で満たされていた。足元には滑りやすい岩が転がり、天井からは鍾乳石が鋭利に突き刺さっていた。ラーンとイシェは互いに声を掛け合いながら慎重に足を進めた。テルヘルは後をついてきたが、彼女の手は常に剣 hiltに添えられていた。
不気味な静寂が洞窟を包んでいた。時折、風の音や岩が崩れる音が響くだけで、他に音はなかった。イシェは緊張感に満ちた空気を肌で感じ、背筋がゾッとするのを感じた。
「何かいる…。」
ラーンの声がかすれた。彼の瞳は大きく見開かれ、恐怖の色を浮かべていた。イシェはラーンの視線に従い、洞窟の奥深くを見つめた。そこには、深い闇の中に浮かび上がる、不気味な光が一つあった。
「あれは…!」
イシェの声が途絶えた。その光は、ゆっくりと近づいてくるにつれて、巨大な影へと変化していった。
テルヘルは剣を抜き、低い声を発した。「敵だ!逃げるな!」