「おい、ラーン、今日は何探すんだ？」イシェが疲れた様子で言った。日差しが容赦なく照りつける遺跡の入り口で、ラーンはいつものように陽気に答えた。「もちろん大穴だ！今日はきっと何か見つかるぞ！」と。イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な態度にはいつも呆れ返ってしまう。
テルヘルは鋭い目で遺跡内部を睨んでいた。「この遺跡はヴォルダン軍が以前調査していた記録がある。何か重要な遺物がある可能性が高い」彼女の言葉にラーンとイシェは顔を合わせた。テルヘルの目的はヴォルダンへの復讐だった。彼女は過去の何かでヴォルダンから全てを奪われたという。その復讐心は彼女を常に突き動かしているようだった。
遺跡内部は暗く湿っていた。壁には不思議な文字が刻まれており、イシェは慎重に記録を取った。ラーンはいつものように先陣を切って進んでいく。彼は危険を恐れない。だが、今回は何かが違う。彼の行動に落ち着きがない。イシェはラーンの様子がおかしいことに気づいていた。
「ラーン、何かあったのか？」イシェが尋ねると、ラーンは不自然な咳払いをした。「いや、何もないよ」と答えたが、彼の目はどこかelsewhereを見つめていた。イシェは彼をじっと見つめた。最近、ラーンはどこかそわそわしている。いつもなら遺跡探索に夢中になるはずなのに、今日は何か他のことを考えているようだった。
すると、突然、ラーンの剣が光った。目の前に巨大な宝箱が現れたのだ。興奮したラーンが鍵を開けると、中には煌びやかな宝石と金貨がぎっしり詰まっていた。「やった！大穴だ！」ラーンは叫んだ。イシェも驚愕した。だが、その時、テルヘルが言った。「これはヴォルダンに渡された宝物だ」
「何だと？」イシェは驚いて声を上げた。テルヘルは宝箱を指さしながら説明した。「この遺跡はヴォルダンがかつて征服した国の王室の墓だった。この宝物は王室の財宝であり、ヴォルダンによって略奪されたものだ。ラーンがここにたどり着いたのは偶然ではない。ヴォルダンは彼の存在を知っていたのだ」
イシェは混乱した。ラーンの無計画な行動が、実はヴォルダンの策略に利用されていたことに気づかされてショックを受けた。ラーンの不審な行動の理由もようやく理解できた。彼はヴォルダンと何らかの繋がりがあったのか？それとも、彼が何かを隠しているのか？イシェは不安でいっぱいになった。
ラーンは宝箱を前に喜びを爆発させていたが、その瞳にはどこか虚ろな光が宿っていた。イシェは彼の表情を見て、あることに気づいてしまった。ラーンの心はすでにヴォルダンに支配されていたのではないかと。そして、それは彼が抱えるある秘密と深く関わっているのだと思った。
イシェの視線がラーンの顔からテルヘルに移ると、彼女は冷静に状況を分析していた。「この宝物は我々のものだ」とテルヘルは言った。「ヴォルダンへの復讐を果たすために必要な資金だ」