ビレーの薄暗い酒場。ラーンが豪快に笑い、イシェが眉間に皺を寄せている。テーブルには空になった酒樽と、かすかに残った野菜の煮物がある。
「おい、イシェ！またそんな顔すんなよ！俺たち、いつか大穴掘ってやるんだぞ！」
ラーンの言葉はいつも通り自信に満ち溢れていたが、イシェにはどこか虚しさを感じた。彼らは今日も遺跡から何も得られなかった。テルヘルからの報酬は僅かにあり、生きて帰れたことだけが救いだった。
「大穴…いつになったら見つけるんだろ…」イシェは呟いた。ラーンの豪快な笑い声は、彼女の心をより深く苦しめた。
テルヘルは静かに酒を飲んでいた。鋭い視線は、まるで二人の未来を透かしているようだった。「焦るな。お前たちはまだ下賤の民だ。だが、いつか真の価値を見出す時が来る」彼女の言葉は冷酷で、どこか悲しげだった。
ラーンは何も理解できていない。イシェは彼の無邪気さに羨ましさを感じながらも、自分自身を責めてしまった。なぜ自分がこんなにも現実的なのか？なぜラーンのように夢を語れないのか？
イシェの瞳には、希望と絶望が入り混じっていた。
「よし！今日はもう寝るぞ！明日はまた遺跡だ！」ラーンは立ち上がり、イシェに手を差し出した。イシェは深くため息をつき、彼の手を握り返した。
テルヘルは二人を見つめ、静かに微笑んだ。彼女の心には、復讐の炎が燃え盛っていた。