ビレーの夕暮れは、山影が街に深く伸びていく様子とともに訪れる。ラーンとイシェは、テルヘルと共に酒場の一角で疲れを癒していた。今日の遺跡探索は、収穫と言えるほどのものはなかった。
「また空振りか…」ラーンの顔色が曇る。「いつになったら大穴が見つかるんだ?」
イシェは溜息をつきながら、テーブルに置かれた粗末なパンを割った。「そんなこと言っても仕方がないわ。今日はこれで終わりよ。」
テルヘルは、酒を一口飲み干してから言った。「明日の探索場所は決めた。かつてヴォルダン軍が占拠していた遺跡だ。危険度が高いが、貴重な遺物があると情報が入っている。」
ラーンの目は輝きを取り戻した。「よし、やるぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せた。「危険すぎるんじゃないのか?それに、なぜヴォルダン関連の遺跡なのか?」
テルヘルは、冷たい視線をイシェに向けた。「それは必要だからだ。私の復讐に、その遺跡は欠かせない。」
その時、酒場の奥から、一人の下女が近寄ってきた。彼女は白いエプロンを身につけ、疲れ切った様子だった。
「お客様、お飲み物をお持ちしましょうか?」
ラーンの視線が下女の顔に止まった。「いいえ、結構だ。」
下女は少しだけ躊躇してから、「あの…すみません…」と呟いた。「あの遺跡について…」
イシェが彼女を遮った。「何の話?」
下女は一瞬ためらい、その後、小さく頷いた。「あの遺跡には…」と彼女は言葉を紡いだ。その言葉は、ラーンたちにとって予期せぬ真実へと繋がっていくのだった。