「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂には、地下深くで何かが眠っているってな」ラーンが目を輝かせながら地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せた。「また、そんな話かい？ 以前も言っただろう、そんな噂話に騙されてばかりじゃ、いつまで経っても大穴には辿り着けないぞ」
「いや、でも今回は違うって！ 聞いた話によると、あの塔はヴォルダンの軍勢が昔に襲撃したんだって。もしかしたら、何か戦利品が残っているかもな！」ラーンの熱意にイシェはため息をついた。「わかったわかった、行こう。だが、今回は本当に危険な場所だと覚悟しておきなさい」
テルヘルは二人を見下ろすように言った。「今回の探索は慎重に進めよ。ヴォルダンとの関係は深まるばかりだ。我々にとって、この遺跡は単なる財宝を求める場所ではないことを忘れるな」。彼女の言葉にはいつもより強い意志が込められていた。
ビレーを出発し、荒涼とした山道を進むうちに、空気が重くなってきた。「ここは以前からヴォルダンとエンノル連合の国境地帯だったんだ」ラーンが呟いた。「だから、遺跡は危険がいっぱいだぞ」。イシェは頷きながら、剣をしっかりと握りしめ、周囲を観察した。
崩れた塔にたどり着くと、ラーンの興奮が頂点に達した。「さあ、大穴発見だ！ 」彼は塔の内部へと駆け込んだ。イシェはテルヘルと共に慎重に後を追う。埃っぽい通路を進み、崩壊した石室にたどり着いた時、彼らは壁一面に描かれた奇妙なシンボルを発見した。
「これは...」イシェが声を失った。「ヴォルダンの紋章だ」。その瞬間、塔の奥深くから不気味な音が響き渡り始めた。ラーンは慌てて剣を抜いた。「何かいるぞ！ 」
影が彼らに襲いかかってきた。テルヘルは冷静に指示を下す。「ラーン、お前は正面から攻撃し、イシェは側面から回り込み、私を援護しろ！」三人は息の合った動きで影に対抗した。激しい戦いの末、影は消滅したが、彼らの前に立ちはだかるのは、巨大な扉だった。
「これは...下命だ」テルヘルは震える声で言った。「この遺跡にはヴォルダンが何かを隠している。そして、我々はそれを引きずり出すためにここにいるのだ」。ラーンの顔色が変わった。「おい、待てよ！ 何を言っているんだ？」
イシェは冷静に状況を分析した。「つまり、この扉を開けるには、ヴォルダンの下命に従う必要があるということか...」テルヘルの瞳は燃えるような光を放っていた。
「そうだ。そして、我々はそれを実行するのだ」。彼女はゆっくりと扉に触れた。「さあ、運命の歯車が始動する時が来たぞ」。