ビレーの夜空には、三日月の光が薄く影を落としていた。ラーンは酒を片手にイシェとテルヘルに向かって話しかけた。「おい、あの遺跡の奥深くで、三日月型の石板を見たって噂じゃねえか？もしかしたら、あれが伝説の大穴への鍵になるかもよ！」
イシェは眉間に皺を寄せた。「そんな噂、聞いたことないわ。それに、大穴なんて、ただの迷信でしょう。」
ラーンの顔は曇った。「そうかもしれない。でもさ、もし本当だったら…」彼の目は輝き始めた。「俺たちの運が変わって、ビレーから脱出して、もっと広い世界へ出られるんじゃないか！」
テルヘルは静かにテーブルを叩いた。「二人が夢見る大穴に興味はない。私の目的はヴォルダンへの復讐だ。遺跡の探索は、そのための手段に過ぎない。」彼女の視線は、遠く離れたヴォルダンの国境の方向へと向けられていた。
「でも、テルヘルさんだって、何か欲しいものがあるはずだろ？」ラーンは挑発的な口調で言った。「大穴が見つかったら、きっとお前にも何かが手に入るさ。」
テルヘルは一瞬だけ、三日月のような形をした傷跡を触れた。その傷は、ヴォルダンに奪われた過去を象徴していた。
「そうだな…」彼女は静かに言った。「私も、何か欲しいものがある。」