「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂には、地下深くで古代の武器が眠っているってな」
ラーンが目を輝かせながら地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せていた。
「またそんな話? 過去の遺跡調査結果を見ればわかるだろう。武器なんて見つからないぞ」
「いや、今回は違うんだ! テルヘルも言ってたじゃないか。ヴォルダンに奪われた技術書には、この塔の地下に何か重要なものがあるって書かれてるらしいって!」
ラーンは興奮気味に言ったが、イシェは彼の熱意に冷めた目で対峙した。
「テルヘルが言ったからって信じる必要はないだろう。彼女の目的はヴォルダンへの復讐だ。この遺跡調査もそのための手段の一つに過ぎない」
「でも…」
ラーンの言葉に割って入ったのはテルヘルだった。彼女は鋭い視線で二人を見据えながら言った。
「私はヴォルダンを倒すために必要なもの全てを探します。そして、この塔にも何かがあるはずだと信じています」
彼女の言葉には確信が込められており、ラーンは思わずうなずいた。イシェも彼女の強い意志に押され気味だった。
3人はビレーの郊外にある崩れた塔へと向かった。塔の入り口は崩れ落ちており、内部は暗闇に包まれていた。
「ここは確かに危険だ…」
イシェが懐中電灯を照らしながら慎重に進んでいくと、ラーンは不吉な予感を感じた。
「おい、イシェ、待て!」
ラーンの叫び声と共に、塔の奥から何者かの気配が感じられた。影が蠢き、彼らの前に姿を現した。それは、荒んだ服装の男たちだった。彼らは武器を手にし、険しい表情で3人を睨みつけていた。
「ここは俺たちの縄張りだ。勝手に近づくな!」
男の一人が声を荒げた。イシェはすぐに状況を判断し、ラーンに小声で言った。
「逃げよう! ここにいると危険だ!」
しかし、ラーンの足が動かなかった。彼は男たちと対峙し、剣を抜いた。
「ビレーの者だ! ここは俺たちの土地だ!」
ラーンの言葉に、男たちはさらに激しく反応した。
「ビレーか! あの町はヴォルダンに屈した犬どもだ!」
男の一人が怒りを露わにした。彼らは一揆を起こした農民たちだった。ヴォルダンへの抵抗を続けているが、圧政に苦しんでいたのだ。
3人は突如として巻き込まれた事態に困惑しながらも、男たちの怒りを鎮めるために必死に言葉を尽くすのだった。