ラーンの粗雑な剣さばきが埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと続く通路を照らす火の光が踊った。イシェは眉間に皺を寄せながら、足元を確かめた。「ここまできても何もないじゃないか…また無駄足を踏まされた気がする」
「いや、待てよ。」ラーンは興奮気味に言った。「あの石碑、よく見ろ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの指さす方向を見た。崩れかけの石碑には、かすかに文字が刻まれていた。「これは…古代語だ…」と呟くと、イシェは背筋を伸ばした。「この遺跡、もしかしたらただの墓じゃないかもしれない」
「そうか!」ラーンの目は輝いた。「大穴が見つかるかもな!よし、イシェ、お前が石碑の解読を頼むぞ!」
イシェはため息をつきながら頷いた。いつも通り、ラーンの計画性のない行動に巻き込まれている。だが、どこかで彼を信じる気持ちもあった。そして、もしかしたら本当に何か大きなものが見つかるかもしれないという期待も抱いていた。
テルヘルは二人を見下ろしながら言った。「この遺跡の奥深くには、ヴォルダンが隠した秘密がある。それを手に入れるために、私はあなたたちを利用するつもりだ」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダン…!」彼は握りしめていた剣を強く握りしめ、「いつかお前と決着をつけるときが来るだろう」と呟いた。
イシェはラーンの表情を見て、何かを感じ取った。彼はいつも無計画で、大穴を探すことに夢中だった。だが、今はどこか違う。ヴォルダンへの憎悪を秘めた彼の目は、まるで一人前の男になったようだ。
「よし、テルヘル。」ラーンの声が響いた。「お前が言うように、この遺跡の奥深くには何かがあるはずだ。俺たちは必ず見つけるぞ!」
イシェはラーンとテルヘルの後ろを歩きながら、静かに呟いた。「一人立ちする時が近づいているのかもしれない…」