「準備はいいか？」テルヘルが鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。ビレーの薄暗い路地裏、彼らの拠点兼宿営地。いつもより緊張感が漂っていた。
「もちろんだ。今日は大穴が見つかる予感しかしない」ラーンは豪快に笑って剣を構えた。イシェはいつものように眉間にしわが寄っていた。「準備万端です。ただ、あの遺跡は危険だと噂されています。特に罠が多いと…」
「心配するな、イシェ」テルヘルが切り込んだ。「今回は私が案内する。あの遺跡には、ヴォルダンが欲しがっているものがある。それを手に入れるために、どんなリスクも冒す覚悟だ」
三人は、薄明かりが差し込む森の入口に立った。遺跡への道は険しく、茨や岩が行く手を阻んでいた。ラーンの力強い腕が道を切り開き、イシェは鋭い目で周囲を警戒していた。テルヘルは常に前方を歩き、時折振り返って二人の様子を確認する。
遺跡の入り口には巨大な石門が立ちはだかっていた。門の上には、奇妙なシンボルが刻まれていた。
「ヴォルダンに奪われた遺物…あのシンボルを見たことがある」テルヘルは呟きながら門に手を触れた。すると、門がゆっくりと開いた。「さあ、行くぞ」
遺跡内部は暗く湿っていた。壁には、古びた絵画や文字が刻まれていた。ラーンは興味津々に壁を眺めていると、イシェが警告した。「ラーン、足元を見て！」
ラーンの足元には、鋭い棘が生えた罠が仕掛けられていた。ラーンはギリギリで身をかわすことができた。
「気をつけろ！この遺跡は罠だらけだ」テルヘルが言った。彼女は既に周囲を警戒し、隠れた罠を探しているようだった。
彼らは慎重に遺跡の中を進んでいく。時折、危険な場所ではテルヘルが先導し、ラーンとイシェが後を追う形になった。
やがて、広間に出た。中央には、金色の光を放つ宝箱が置かれていた。
「あの宝箱こそ、ヴォルダンが欲しがっているものだ」テルヘルは興奮した様子で言った。「それを手に入れるために、私は何年も準備をしてきた！」
ラーンは宝箱に駆け寄ろうとしたが、イシェが彼を制止した。「待て、ラーン！何か変だ… 」イシェは宝箱に刻まれたシンボルをじっと見つめていた。
その時、壁から黒い影が現れた。それは、ヴォルダンの刺客だった。彼らはテルヘルを狙って襲いかかってきた。
「やられた！」ラーンが剣を抜き、刺客と激突した。イシェも daggers を構え、戦いに加わる。
激しい戦闘が繰り広げられる中、テルヘルは宝箱に手を伸ばそうとした。しかし、もう一人の刺客が彼女の前に立ちはだかった。
「これで終わりだ、テルヘル」刺客は冷酷な笑みを浮かべた。「ヴォルダン様がお前を許すはずがない！」
その時、イシェが刺客の隙をついて攻撃した。彼は、いつも以上に冷静に戦いを繰り広げているように見えた。まるで、これまで隠していた力を解放しているようだった。
「イシェ…？」ラーンは驚いて声を上げた。イシェは刺客を倒し、テルヘルに駆け寄った。「早く逃げろ！私はここで彼らを足止めする！」
テルヘルは驚きと感謝の気持ちが入り混じった表情でイシェを見つめた。そして、宝箱を手にその場から逃げることを選んだ。