「よし、入ろう!」
ラーンの豪快な声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェはため息をつきながら、彼についていく。遺跡の入り口は、まるで巨大な歯がむき出しになった獣の口のように開いていた。
「本当にここに入るのか?」イシェが不安そうに尋ねると、ラーンはニヤリと笑った。
「大丈夫だ。テルヘルが言うには、この遺跡には古代文明のメカニズムが残されているってんだ。大穴が見つかるかもな!」
イシェは、彼の楽観性に辟易しながらも、足取りを早めた。遺跡内部は薄暗く、湿り気が立ちこめていた。壁には、複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように脈打 seemed to throb.
「ここだな。」テルヘルが先導し、奥深くへ進んでいく。彼女は、遺跡の構造図を手に、まるで迷路を解き明かすように慎重に進む。
「この部屋の中心には、巨大な装置があるはずだ。古代文明の技術は、私たちの想像を超えている。そのメカニズムを解明できれば…」
テルヘルは目を輝かせながら語った。彼女の目的は遺跡の財宝ではなく、ヴォルダンへの復讐だった。そして、その復讐を果たす鍵が、この遺跡にあると信じていた。
ラーンは、テルヘルの言葉を聞きながら、少しだけ不安を感じた。イシェも同様に、テルヘルの真意を疑っていた。
「一体、どんなメカニズムなんだろうな…」ラーンの呟きが、遺跡の静寂に響き渡った。
彼らは、巨大な装置の前に辿り着いた。それは、複雑に絡み合った歯車やパイプで構成され、まるで巨大な心臓のように脈打っていた。
「これだ!」テルヘルが興奮気味に叫んだ。「このメカニズムを起動させれば…」
彼女は装置の操作パネルに触れようとしたその時、装置から轟音が響き渡り、壁一面に描かれた模様が光り始めた。
「これは…!」イシェは驚愕の声を上げた。
装置から放たれた光が、彼らの周りを包み込み、世界が歪んでいくように感じた。