「よし、今回はあの洞窟だな!」
ラーンが地図を広げ、指を走らせる。イシェは眉間にしわを寄せた。「また危険な場所かい? 以前も言ったじゃないの、あの洞窟は崩落のリスクが高いって。」
「大丈夫だぞ、イシェ! 今回は大穴が見つかる予感がするんだ!」ラーンの自信に満ち溢れた声と表情は、イシェにはいつも通り不安を抱かせるものだった。だが、彼を止めることはできない。ラーンが夢見る莫大な財宝と冒険への渇望は、イシェにも少なからず影響していたからだ。
「よし、準備はいいか? テルヘルさん!」
ラーンの呼びかけに、テルヘルが鋭い視線で地図を睨んでいた。「準備は完了している。だが、その洞窟の情報は不十分だ。内部構造や罠の有無など、不明な点がいくつもある。」
「気にすんな、テルヘルさん! 冒険にはリスクがつきものだ!」ラーンの軽率な言葉に、イシェはため息をついた。テルヘルは地図を片付けると、鋭い剣を手に取った。「では、出発だ。ボトルネックになる可能性のある場所には注意しなければならない。」
三人はビレーの郊外へと向かった。廃墟と化した街並みを抜け、険しい山道を登り詰めると、そこは広大な洞窟入り口があった。
「ここが噂の洞窟か…」イシェは息を呑んだ。洞窟の入り口は巨大な岩壁に開けられており、その奥には暗闇が広がっていた。ラーンは目を輝かせ、剣を構えた。「よし! 行くぞ!」
洞窟内に入ると、冷たい空気が肌に刺さる。足元には石畳が敷かれており、時折崩れかけている部分があった。イシェは慎重に足を進めながら、周囲を見回した。壁には古代の文字が刻まれており、謎めいた絵画も描かれていた。
「ここは一体…」イシェが呟くと、ラーンは興奮気味に言った。「もしかしたら、ここが伝説の遺跡の入り口かもしれないぞ!」
テルヘルは冷静に状況を分析していた。「しかし、この洞窟は広大で複雑だ。ボトルネックとなるような場所が多く、進路を阻む可能性もある。」
「大丈夫だ、テルヘルさん! 僕らが道を切り開く!」ラーンの言葉に、イシェは不安を感じた。彼はテルヘルの冷静な判断力と経験に頼りたかったが、ラーンの熱意には逆らえない。
三人は洞窟の奥深くへと進み始めた。しかし、やがて進むにつれて、道は狭くなり、天井も低くなっていった。
「ここはボトルネックだ…」イシェは不安を隠せないでいた。
ラーンが前に進んでいくと、崩落した岩に阻まれた。「なんだこれは!」
テルヘルは鋭い目で岩の状況を見極めた。「この場所から先は進むことは難しい。ボトルネックになっているのだ。」
ラーンの顔色が変わった。「そうか… 諦めるのか?」
イシェはラーンの肩を叩いた。「まだ諦めないで。他の道を探してみようよ。」
テルヘルは冷静に言った。「確かに他の道がある可能性もある。しかし、時間との勝負だ。ボトルネックを突破する手段を見つけなければならない。」