「よし、今回はあの洞窟だ！」
ラーンが目を輝かせ、地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せながら、地図を指さした。
「またしても危険な場所を選んだじゃないか。あの洞窟は崩落の危険が高いと聞いたぞ。」
「大丈夫、大丈夫！俺が先頭を切って行くから。それに、テルヘルさんが報酬を上げてくれただろ？」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。確かに報酬は魅力的だが、命を落とすリスクも高い。
テルヘルは冷静な目で二人のやり取りを見つめていた。彼女はヴォルダンへの復讐を果たすために、この遺跡探索が必要だった。そして、そのために必要なのは、ラーンの力とイシェの頭脳だ。
「準備はいいか？この洞窟には、ヴォルダンが恐れる古代の遺物があるという噂だ。」
テルヘルの言葉に、ラーンは興奮気味に剣を構えた。イシェは懐からランタンを取り出し、慎重に洞窟へ足を踏み入れた。
洞窟の中は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。ラーンの足音だけが響き渡る。
「ここは確かに危険だ…」
イシェが呟くと、突然床が崩れ始めた。ラーンは咄嗟にイシェを掴み、崩落する場所から逃げ出した。
「くそっ！あの洞窟はもっと危険だったのか！」
ラーンの怒号が響き渡る中、テルヘルは冷静さを失わなかった。
「落ち着け、ラーン。慌てると判断ミスをするぞ。」
イシェはテルヘルの言葉に少し安心した。彼女は冷静で状況を的確に判断できるテルヘルを信頼していた。
しかし、その時、洞窟奥から不気味な音が聞こえてきた。それはまるで、何かが目を覚ますような音だった。
ラーンのプライドは、この危険な状況でも彼を前へ突き動かした。彼は剣を握りしめ、再び洞窟の奥へと進んでいった。イシェもテルヘルも、彼の後を追うしかなかった。