「よし、今日はあの崩れた塔を目指そうぜ！」
ラーンの声はいつも通りの元気だった。イシェはため息をつきながら地図を広げた。
「またしても遺跡の地図か…」
「ほら、イシェ。今回は違うぞ！あの塔には古代の武器が眠っていると聞いたんだ」
ラーンは興奮気味に剣を構え始めた。イシェは彼の熱意に苦笑する。
「そんな噂話に騙されないでほしいわ。それに、あの塔はヴォルダン軍の哨戒ポイントだって聞いたじゃない。危険すぎる」
「大丈夫だ！テルヘルが助けてくれるさ。それに、あの武器があれば…」
ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の瞳に映る欲望と希望を理解していた。だが、同時にそこに潜む危険も感じていた。
「あの武器でヴォルダンに復讐するんだ」
テルヘルの言葉が脳裏をよぎった。彼女はいつも冷静沈着な態度を崩さなかったが、その目は冷酷な憎悪に満ち溢れていた。イシェはラーンの夢とテルヘルの復讐心、そして自分自身の安全の間で揺れ動く自分の心を抑えきれずにいた。
「よし、わかったわ。でも、今回は私がリーダーだ。危険な場所には近づかないように」
イシェは決意を固めた。彼女はラーンとテルヘルに真実を伝えたい。だが、その言葉が彼らの心に刺さるかどうかは分からなかった。そして、その選択が彼らを救うのか、それとも破滅へと導くのか。イシェは胸の中で深くため息をついた。