ビレーの街並みを背に、ラーンはイシェの眉間に刻まれた皺に笑いかけた。「ほら、イシェ。今日は絶対何か見つかるって気がするんだ!」
イシェはため息をつきながら視線を遺跡の入り口に向けた。「そう願うばかりだ。ラーン。今日の探索費用はテルヘルからもらった前借金で賄われていることを忘れるな」
「わかってるよ、わかってる」ラーンは肩をすくめた。「でもさ、あのテルヘルも今日は何か違う気がするんだ。いつもより目が輝いてるし…」
イシェは彼に視線を向け、鋭い目つきで言った。「テールの輝きは、大穴が見つかるという希望から生まれているのではない。彼女の目的と、私たちがその渦中にあることを忘れるな」
遺跡内部は薄暗い。ラーンの足音が石畳を響かせ、イシェの動きは静かで素早い。テルヘルは先頭を歩き、時折振り返りながら地図を広げる。彼女の白い衣装は埃にまみれながらも、どこか滑らかで美しいデザインを保っていた。
「ここだ」テルヘルが立ち止まり、壁に手を当てた。「古代文字の断片。これは…」彼女は興奮を抑えきれずに言った。「ヴォルダン王室の紋章だ!」
ラーンは興奮して剣を抜き出した。「よし!ついに何か見つかったのか!?」
イシェは冷静に言った。「まだ分からない。紋章だけでは何もわからない」
テルヘルは壁を撫でながら言った。「この紋章は、ヴォルダン王室がかつてこの遺跡に隠した秘密を示している。そして、その秘密こそが、私の復讐の鍵となるのだ…」彼女の瞳には燃えるような光が宿っていた。
ラーンの目は輝き、イシェの眉間に皺が刻まれた。彼らの運命は、この遺跡に眠る秘密と、テルヘルの復讐というデザインによって交錯し始めた。