ビレーの酒場「三叉路」の薄暗い隅で、ラーンが杯を傾けていた。イシェは眉間にしわを寄せ、彼をじっと見つめていた。「また遺跡探索に行くのか?」
「ああ、テルヘルから依頼が入ったんだ。今回は古代都市跡らしいぞ。大穴が見つかるかもな!」ラーンの顔は興奮で輝いていたが、イシェにはどこか不自然に思えた。いつもならもっと騒いでいるはずなのに、今日は妙に落ち着いているのだ。「何か隠してるんじゃないのか?」
ラーンは目をそらし、杯を空にした。「いや、別に…」
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。黒曜石のような瞳が鋭く二人を見つめると、口を開いた。「準備はいいか?今日の探索は特別だ。ヴォルダンに関する重要な情報があるかもしれない」
イシェは息をのんだ。ヴォルダンといえば、テルヘルの復讐の対象であり、この世界の脅威の一つだ。その情報に手が届くとは…だが、ラーンの様子がますます不自然に思えてきた。「何かあったのか?」
ラーンは小さく頷き、イシェに目を合わせた。「実は…」
テルヘルが coughing sound をあげた。「時間が無い。話したければ遺跡でだ」そう言うと、彼女は歩き出した。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせてから、テルヘルの後を追った。
遺跡への道中、ラーンの口から驚きの事実が明かされた。彼は実はヴォルダンに仕えるスパイであり、テルヘルを裏切ろうとしていたのだ。イシェは驚きと怒りで言葉を失い、ラーンを睨みつけた。「なぜ…?」
ラーンは苦しそうに言った。「ヴォルダンは俺の家族を人質にしてるんだ…。俺は仕方なかった…」
イシェは深くため息をつき、自分の気持ちを整理した。「でも、テルヘルも大切な仲間なのに…」
「わかってる。だが…」ラーンの目は涙で濡れていた。「俺は…もう迷っている」
遺跡に到着すると、テルヘルはすでに中に入り込んでいた。ラーンとイシェが続くように進むと、そこは広大な地下空間だった。壁には古代の文字が刻まれており、中央には巨大な石棺が置かれていた。
テルヘルが石棺に手を伸ばした時、突然床が崩れ、深い穴が開いた。「うわああ!」
ラーンとイシェは慌てて掴まり合った。
「これは…」イシェの声が震えていた。
石棺の周りに刻まれた文字が光り始め、空から光線が降り注いだ。すると、石棺がゆっくりと開き始めた。その中には…
イシェは目を丸くした。そこには、予想外の光景が広がっていた。それは…。
「サプライズ…」テルヘルは口角を上げ、冷酷な笑みを浮かべて言った。