ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げている。「なあイシェ、あの遺跡の奥深くで見つけた古代の石碑、あれは一体何だったんだ？まさか、あの記号が…！」
イシェは眉をひそめながら、彼の興奮を冷やすように言った。「ラーン、何度も言うけど、それはただの奇妙な模様に過ぎない。宝の地図でもなんでもじゃない。それに、あの遺跡は危険だっただろう？あの崩落寸前の通路で、もう少しで我々が…」
ラーンの笑顔は少し曇る。「ああ、そうだな…でもさ、いつか必ず大穴を掘り当てるんだぞ！その時はお前も一緒に豪邸に住むんだ！」
イシェはため息をつきながら、視線をテルヘルに向けた。彼女はいつものように静かに酒を飲んでいる。氷の粒がグラスの中で音を立てる音だけが、賑やかな酒場の喧騒に重く響いている。テルヘルの顔には、いつもと同じように冷酷な表情が浮かんでいて、ラーンの夢話に耳を傾ける様子すらない。イシェは彼女のことをよく分からなかった。ヴォルダンからの復讐という目的は理解できるが、そのために遺跡探査に手を染める理由がわからない。
「なあテルヘル、お前はどう思う？あの石碑について」
テルヘルはゆっくりと視線を上げると、ラーンを見つめた。「興味深い模様だ。しかし、それが何を意味するのかは私にはわからない。だが…」彼女は少しだけ口調を柔らかくした。「その石碑が、我々の目標に繋がる可能性は否定できない。」
ラーンの顔は再び輝きを取り戻し、「そうか！やっぱりな！お前も信じるんだろ？いつか必ず大穴を掘り当てるって！」
イシェは彼らを見つめながら、胸の中でため息をついた。ラーンの無謀さとテルヘルの冷酷さ、そして自分自身の現状に疲れを感じていた。果たして彼らは本当に「大穴」を見つけられるのか？それとも、この遺跡探査の果てには、想像を絶する悲劇が待ち受けているのだろうか？
その時、酒場のドアが開き、一人の男が入ってきた。彼は黒ずくめのマントを身にまとい、顔は影に隠されている。男はテーブルの上にある酒瓶を蹴飛ばし、その場に居合わせた客たちを怯えさせるように叫んだ。「ヴォルダン軍が来た！逃げろ！」
パニックが起こり、酒場は大混乱に陥った。ラーンとイシェは驚き、テルヘルは冷静さを失うことなく立ち上がった。男はさらに叫びながら、剣を抜いた。「ヴォルダンは必ずこの街を焼き払う！抵抗する者は皆殺しにする！」
イシェはラーンの腕をつかみ、「逃げよう！」と叫んだ。しかし、ラーンは動かなかった。彼は男に向かって剣を抜き、立ち向かった。「誰だお前は？なぜ俺たちの街を襲うんだ？」
テルヘルはラーンの背後から彼の手を掴み、引き戻した。「無駄だ。ここはもう危険だ。逃げろ！」
イシェもラーンの手を引っ張り、酒場から脱出しようとした。しかし、その時、男が笑い声を上げながら言った。「逃げるな！お前たちはヴォルダンに仕える奴隷になるのだ！」
男は剣を振り下ろし、ラーンとイシェに向かって襲いかかってきた。