「よし、今回はあの崩れかけた塔だな!噂によると、最上階にはヴォルダンの魔兵が持ち去ったという古代の書物があるらしいぞ!」ラーンは目を輝かせ、興奮気味に言った。
イシェは眉をひそめた。「そんな話、聞いたことないわよ。それに、あの塔は危険だって。崩落しかねないって警告も出ているのよ」
「大丈夫だ!俺がしっかり守るからな。それに、書物が見つかったら大金になるぞ!あの日当じゃビレーの酒場でも満足に楽しめないじゃないか!」ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。
テルヘルは冷静な目で二人のやりとりを見つめていた。「噂話に惑わされてはいけない。目的を達成するために必要なのは情報と計画だ」彼女はテーブルの上に広げた地図を指さした。「塔の構造を調べ、侵入経路を確認する必要がある。そして、ヴォルダンの魔兵が残した可能性のある罠についても考慮しなければならない」
ラーンはテルヘルの言葉に少しだけ気を引き締めたが、すぐに元の調子に戻った。「わかったわかった!準備は万端だ!」
イシェはテルヘルに深々と頭を下げた。「あなたはいつも冷静で頼りになります。彼を説得するのが大変な時でも、いつも冷静に対応してくださってありがとうございます」
テルヘルは小さく頷いた。彼女の目的は、ヴォルダンへの復讐である。そのために必要なのは、単なる武力ではない。情報、戦略、そして人々を操る力だった。ラーンとイシェは、その一部に過ぎない。
塔の遺跡に足を踏み入れた時、ラーンの無鉄砲さとイシェの慎重さ、そしてテルヘルの冷酷な判断が交錯する。三人はそれぞれの信念を胸に、古代の書物、そして自分たちの運命へと歩みを進めていく。
だが、その背後では、ヴォルダンという巨大な影が彼らをじっと見つめている。彼の目的もまた、「イデオロギー」によって動かされているのだ。