「おいイシェ、あの石像、ちょっと触ってみる？」ラーンが陽気に言った。イシェは眉をひそめた。「またそんな無茶なことを言うの？ あれは明らかに罠だぞ」。
ラーンの足が止まる。「いや、でもさ、もしかしたら何か仕掛けがあるんじゃないか？ 宝箱とか、秘宝とか…」
「宝箱なんてないよ。それに、あの石像は明らかにヴォルダンの兵士が置いたものだ。罠だと私は思う」。イシェの言葉にラーンは少しだけ顔を曇らせたが、「わかったわかった。じゃあ、ちょっとだけ覗いてみるか」と、石像の足元に手を伸ばした。
テルヘルは、ラーンの行動をじっと見ていた。「あの男は本当に…」と、彼女は呟いた。ラーンの無茶な行動は、彼女にはわざとらしいように見えた。まるで、何かを仕掛けてくるようだった。
「何だ、何もないじゃないか」。イシェが肩を落とした。「ほらね、言っただろ」。だが、その瞬間、石像の目が赤く光り始めた。
「うわっ！」ラーンは驚いて後ろに跳ね返った。「罠だ！」イシェが叫んだ。石像が動き出したのだ。巨大な剣を振り下ろす。
ラーンは慌てて剣を抜いたが、石像の攻撃は予想以上に速かった。イシェは慌ててラーンの前に飛び出し、彼を庇うように盾になった。
「イシェ！」ラーンは叫んだ。テルヘルは冷静に状況を見極めた。「あの石像、動きがぎこちない」。彼女は剣を抜いて石像に切りかかった。石像の腕を切り落とす。しかし、その瞬間、石像の体から黒い煙が立ち上った。
「これは…！」テルヘルは驚きの声を上げた。煙の中から、何者かが姿を現した。それは、黒ずくめのマントを身につけた男だった。
「よくも私の罠にはまったものだ」。男は冷酷に笑った。「お前たちをヴォルダン様に捧げるのだ！」
ラーンとイシェは驚愕した。テルヘルは男に剣を向けた。「ヴォルダンか…まさか、お前が…」